トランプ「入ってはいけないとされている」⇒朝日新聞「入れないと発言」
朝日新聞「トランプの『福島に3千年入れない』発言に福島県知事『理解できない』」
11月11日、福島県の内堀雅雄知事の定例記者会見において、記者からトランプ氏の大統領選期間中の「3000年は福島に入れない」という発言について問われた際の回答が朝日新聞から報道されています。
タイトルでは「トランプの『福島に3千年入れない』発言に福島県知事『理解できない』」ですが、Xのポストや本文を見ると「どのような真意で発言をされたのか十分に理解することができませんでした」となっていることに注意です。
以下では内堀氏の発言とトランプ氏の発言のソース、文脈を提示します。
内堀雅雄知事「どのような真意で発言をされたのか十分に理解することができませんでした」
該当部分は15分過ぎから
内堀知事 お尋ねになった件についてでありますが、あの報道が出た際、私自身、英語の原文を確認しておりますが、どのような真意で発言をされたのか十分に理解することができませんでした。いずれにしても、まず、政府と東京電力においては国内外に対する正確な情報発信にしっかりと取り組んで頂きたいと考えております。また、県としても、引き続き、福島の現状について正しい情報の発信に務めてまいります。さらに、インバウンドの受け入れ等を促進して本件に対する理解が一層広まるよう取り組んでまいります。
内堀雅雄知事は、「どのような真意で発言をされたのか十分に理解することができませんでした」と述べるにとどまり、トランプ氏の発言の評価をすることを避けました。
このような姿勢になるのは、元の発言を聞いてれば理解できます。
現時点で、トランプ氏の発言に確定的な意味・姿勢を感じ取ることは困難だからです。
ジョー・ローガンとの対談「原子力という言葉からの連想という政治問題」「入れないとされている」
10月末に行われたジョー・ローガンのドナルド・トランプとの対談で、当該発言が為されています。原子力に関する当該発言部分は1h6m27sから
JR: Let me ask you about nuclear. One of the things that when I’ve talked to people that have a real understanding of nuclear power Their position is it’s probably the cleanest safest form of electricity that we could generate and that the fears of nuclear power are realy about a few disasters, the Fukushima, Three Mile Island. These are old systems and they’re much more capable now, and they’re capable making even better systems. But it’s a difficult political issue. Because you think, nuclear power, you think Chernobyl. That’s what everybody does. They have this connection. They had the potential disaster of Fukushima.
DJT: (ジョーローガンが”potential”と言い終わる前に食い気味に)Or Fukushima which is where you’re not supposed to enter the land for 3,000 years or something…
JR: I think that area is like gonna be radioactive for probably longer than you could imagine. But the point is they’re better at it now.
DJT: Right.
JR: And that they could do it now and you can generate in a way that you don’t have to worry about these one of the most ridiculous things is electric cars being powered Coal Fired plants. It’s a ridiculous thing.
ジョー・ローガンの「原子力発電を本当に理解している人たちと話したとき、彼らの立場は、原子力発電はおそらく最もクリーンで安全な発電方法であり、原子力発電に対する不安は、福島やスリーマイル島といったいくつかの災害に対するものだということでした。これらは古いシステムであり、現在は遥かに性能が向上している。しかし、政治的には難しい問題だ。というのも、原子力発電といえばチェルノブイリを思い浮かべるでしょう。誰もがそう考える。チェルノブイリとのつながりがある。福島という潜在的な災害があった。」という前置きがありました。
それに対してトランプが食い気味に、ジョーローガンが福島の単語を出す前から発言を始めて「あるいは、3,000年間はその土地に入ってはいけないなどとされている福島など…」と発言しています。*1
これは、一般人が「原子力発電」から連想するものとして、原子力災害を想起してしまうということ、トランプ氏はその一例として「3000年は~」というものがあると言っており、この部分だけではトランプ自身がそのように考えているかは判然としません。
実際、この直後の会話では、ジョー・ローガン氏が「 あの地域は、おそらく想像以上に長い間、放射能に汚染されていると思う。」の後に「しかし重要なことは、現在の方がベターなことだ」と言ったことに対して、トランプ氏が「その通りだ」と反応を返しています。
「ベター」は原子力発電所の機能や性能ではなく、福島の状況について言っているのですから、この点を考慮すべきでしょう。
福島県の内堀知事も、このような文脈を正確に理解しているからこそ、踏み込んだ評価ができるものではないと判断したのでしょう。
“nuclear warming”の意味は定かではありませんが、「核戦争の過熱」のような意味合いに聞こえます。同様の認識を書いているものとしてガーディアンの以下の記事。
Five ways a Trump presidency would be disastrous for the climate | US elections 2024 | The Guardian
実は、10月と同様の主張が8月にも行われていました。
8月のイーロン・マスクとの対談ではブランディングの問題として「3000年は住めないと言われている」
「3000年は住めないと言われている」というトランプ氏の発言は、8月のイーロン・マスクとの対談でも問題視され報道もされていたので、情報を整理していました。
文脈が重要で、5つの核兵器保有国の話から原子力発電政策の話に移った際に”nuclear=核”という言葉が核兵器を連想させるため、名前を変える必要がある、ブランディングの問題がある、という話が先に来ていました。
会話の流れからは「そう巷で言われていることの問題」として語っていると解することができるものでした。
ただ、本当にそれにとどまるのか?トランプ自身がそう思っていることを誤魔化すために他人が言っていることにしているに過ぎないのではないか?仮に他者の例示だとしてもあまりに不用意な発言で、明確に危険が無いことを言及しない時点で問題ではないか?という疑問や指摘は、妥当なように思われます。
なお、トランプの電力政策のスタンスは「反・反化石燃料」であり、AIで電力需要が今の倍になるから化石燃料も原発も増やせという立場です。
で、あるならば、彼の政策推進の障害である「原子力発電」「原子力」という単語に対する一般の人々の拒否反応を緩和させるには、トランプが福島に足を運ぶことが寄与するはずですが、そういう方向に向かわせることができないか?ということが考えられて欲しいと思います。
*1:(※最後の数単語は聞き取れませんでした)
*2:この間に、原子力発電所のコンクリートの頑強さを滔々と語るもジョーローガンに「的を射てない」とたしなめられる一幕がありました。
編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年11月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。