先日以下の事案に付いて海幕広報室に問い合わせをだしました。
海上自衛隊の艦載型無人機3機、予定過ぎても未契約…製造元の米企業が生産ライン閉鎖 読売新聞
18年中期防では、防衛政策の基本指針となる「防衛計画の大綱」に基づき、19~23年度の5年間で導入を目指す主要装備品24種類が示され、このうち護衛艦に搭載する無人機は3機の整備が決定していた。ところが、検査院が契約状況を調べたところ、これまでに1機も契約が締結されていなかったという。
検査院や防衛省によると、海自は中期防策定前に市場調査を行い、要求性能を満たす無人機を製造しているのが米ノースロップ・グラマン社だけと把握し、同社との契約に向けて準備を進めていた。しかし、22年度に同社の生産ラインが閉鎖され、無人機の製造が不可能になったという。
すると驚愕の回答が。
本件に関連した政策評価・調達にお関する開示可能な資料について、現段階で公表さ
れているもののほかございません。
外部に出せる資料がまったくないとかありえないと思いますが。更に続きます。
調達予定であった機体は「ファイアスカウト」か否かというところにつきまし
て、ノースロップ・グロップ社ではございますものの、大変申し訳ありませんが、海自の艦載型UAVに求める機能・性能が明らかにする恐れがあるため、機体名についての回答は差し控えさせていただきたく存じます。
これ担当部署の真面目な答えですよ。メーカーもわかっていて、ファイアスカウトしかないでしょう。それを、公開情報を秘密だと言い張るのは民主国家の軍隊のセンスではないです。むしろかつての帝国海軍と同じです。
会計検査院からつつかれたことでナーバスになっているのでしょうが、都合の悪いことはたとえ公開できる情報でも隠蔽する、というのは文民統制の否定ですよ。もっと核心的な都合の悪い話は絶対に隠蔽しようすとするでしょう。
つまり今後海上自衛隊の公開する情報も信用できない、そう判断されることになるでしょう。
先のブッシュマスター展示の隠蔽もそうですが、防衛省、自衛隊の情報保全は完全に異常です。率直に申し上げて頭がオカシイレベルです。
このような隠蔽が続けば、政治家やメディア、納税者が防衛省の行状や金の使い方を把握し、監視することができなくなります。海上自衛隊では戦史を教えていないのでしょうか。
このような組織防衛のための隠蔽は逆に組織を弱体化させます。組織の襟を正し、内部ではできない改革を外部からの圧力で行うことができなくなるので、組織は自壊に向かいます。
かつての帝国海軍が無謀に大陸で作戦を拡大し、お手盛りで予算を増やして、挙げ句にアメリカにまで戦争を売って負けた原因は、海軍(陸軍も)の組織外からの批判を封殺して夜郎自大に陥ったことが原因です。その意味では海上自衛隊は大日本帝国海軍の正統な後継者です。
防衛省や自衛隊こういう体質を両手を上げて喜んでいるのが中南海と人民解放軍でしょう。なにしろ1元も使わずに、相手が自ら弱体化、自壊への道を歩んでおり、その自覚すらない。こういう組織に予算を増やす必要はないと思います。
財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
防衛(参考資料)
■本日の市ヶ谷の噂■
防衛医大の研究テーマを見ると文科省の科研費と防衛省の課題研究費の2重どりが多いことは皆の周知の公然の秘密。文科省の科研費の応募規定には2重応募は明確に禁止されているのだが、省をまたいだ申請はチャックが働いていないから。清住哲郎防衛医科大学校病院救急部長の研究課題、バーチャル空間を駆使した救急教育の標準化 もそのひとつ、との噂。
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月刊「紙の爆弾」12月号に以下の記事を寄稿しました。
東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
Merkmal(メルクマール)に以下の記事を寄稿しました。
- 自衛隊「職務中の死亡事故」はなぜ止まらないのか?4月のヘリ墜落で8人死亡、背後に潜む人災の実態とは
- 航空自衛隊のT-7後継機取得 「官製談合」疑惑が再燃するなか、透明な入札は実現できるのか?
- 率直に言う 陸上自衛隊の戦車は「全廃」すべきだ
- 「石破首相 = 軍事オタク」は本当か? 防衛知識ゼロの他政治家が国を守れるのか? 石破氏を長年知るジャーナリストが“真実”を語る
月刊軍事研究に「ユーロサトリでみた最新MBTの方向性」を寄稿しました。
Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
European Security & Defenceに寄稿しました。
JGSDF calls for numerous AFVs within Japanese MoD’s largest ever budget request
東京新聞にコメントしました。
兵器向け部品の値段「見積り高めでも通る」 防衛予算増額で受注業者の利益かさ上げ 「ばらまき」と指摘も
東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
海上自衛隊の潜水艦メーカーは2社も必要あるか川重の裏金問題で注目される潜水艦の実態
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2024年11月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。