1人あたりGDPの国際比較:中南米・アフリカ

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1. 中南米・アフリカとは

前回は、中東・CISの国・地域について1人あたりGDPの国際比較をご紹介しました。

以前から産油国の水準がかなり高い特徴がありますが、先進国として着実に成長するイスラエルや、ロシア、トルコ、カザフスタンもかなりの水準に達していて大変興味深い地域のようです。

今回は、中南米とアフリカの1人あたりGDPについて国際比較してみましょう。

地域の区分は外務省のホームページを参照し、次のような区分としています。(参考ページ: 外務省 国・地域

<中南米>

アルゼンチン アンティグア・バーブーダ ウルグアイ
エクアドル エルサルバドル ガイアナ
キューバ グアテマラ グレナダ
コスタリカ コロンビア ジャマイカ
スリナム セントビンセント・グレナディーン セントクリストファー・ネービス
セントルシア チリ ドミニカ
ドミニカ共和国 トリニダード・トバゴ ニカラグア
ハイチ パナマ バハマ
パラグアイ バルバドス ブラジル
ベネズエラ ベリーズ ペルー
ボリビア ホンジュラス メキシコ

<アフリカ>

アルジェリア アンゴラ ウガンダ
エジプト エスワティニ エチオピア
エリトリア ガーナ カーボベルデ
ガボン カメルーン ガンビア
ギニア ギニアビサウ ケニア
コートジボワール コモロ コンゴ共和国
コンゴ民主共和国 サントメ・プリンシペ ザンビア
シエラレオネ ジブチ ジンバブエ
スーダン セーシェル 赤道ギニア
セネガル ソマリア タンザニア
チャド 中央アフリカ チュニジア
トーゴ ナイジェリア ナミビア
ニジェール ブルキナファソ ブルンジ
ベナン ボツワナ マダガスカル
マラウイ マリ 南アフリカ
南スーダン モザンビーク モーリシャス
モーリタニア モロッコ リビア
リベリア ルワンダ レソト

中南米は、メキシコ、チリ、コロンビア、コスタリカとOECD加盟国も多く含まれますし、BRICsに数えられるブラジルや、かつて高い経済成長で存在感を発揮したアルゼンチンなど興味深い国が多いですね。

アフリカは最後のフロンティアと呼ばれますが、国の数が多いのも特徴です。

中東地域とのかかわりの深いエジプトや、欧州の影響を大きく受けるモロッコ、チュニジアの経済水準がどの程度なのかも気になります。

2. 1人あたりGDPの推移:為替レート換算値

まずは中南米・アフリカの代表的な国々について、1人あたりGDP(為替レート換算値)の推移を眺めてみましょう。

図1 1人あたりGDP 名目 為替レート換算値 中南米・アフリカ
IMF World Economic Outlook Databaseより

図1が中南米・アフリカの1人あたりGDP(為替レート換算値)の推移です。

参考に日本(青)の推移も表記しています。

アルバとバハマが2023年に日本を上回っています。

アルバは、中南米の西インド諸島に位置するオランダ王国の構成国で、人口10万人ほどの国だそうです。

バハマは、同じく西インド諸島に位置するイギリス連邦の加盟国で、人口40万人ほどの国のようです。

どちらも西欧の構成国の一部という事で、経済水準もこの地域の他の国を大きく上回る事になるようです。

それ以外の国では、チリ、コスタリカ、メキシコのOECD加盟国に加え、メキシコ、アルゼンチンが近年1万ドルを超えているようです。

BRICSに数えられる事もある南アフリカやOECD加盟国のコロンビアは2010年代から停滞傾向が続いていて、エジプトは上昇傾向ですが今のところ4000ドル弱の水準となります。

3. 1人あたりGDPの国際比較:為替レート換算値

続いて、それぞれの地域での最新の1人あたりGDP(為替レート換算値)を国際比較してみましょう。

まずは中南米からです。

図2 1人あたりGDP 名目 為替レート換算 中南米 2023年
IMF World Economic Outlook Databaseより

図2が中南米の2023年の1人あたりGDP(為替レート換算値)です。

アルバ、バハマに続き、セントクリストファー・ネイビス、バルバドス、トリニダード・トバゴ、アンティグア・バーブーダなどカリブ海のイギリス連邦の加盟国や、ウルグアイ、ガイアナ、パナマなどの国が上位となります。

チリ、コスタリカ、メキシコなどのOECD加盟国が続き、アルゼンチン、ブラジルも1万ドルを超える水準です。

中東・CISやアフリカの国々と比べると、1万ドルを超え、比較的水準の高い国が多いようです。

図3 1人あたりGDP 名目 為替レート換算値 アフリカ 2023年
IMF World Economic Outlook Database

図3がアフリカの1人あたりGDP(為替レート換算値)の国際比較です。

セーシェルが2万ドルを超えていて、相対的にかなり高い水準です。

セーシェルはインド洋の115の島々から構成されるイギリス連邦の加盟国で、人口は10万人ほどだそうです。

モーリシャスも1万ドルを超えていますが、同様にインド洋のイギリス連邦加盟国で、人口は120万人ほどの国です。

南アフリカとエジプトは1万ドルを超えていませんが、地域の中では相対的に高い水準となっています。

その他の国では3000ドル未満の国が大半を占め、経済的な水準が全般的に低い地域と言えそうです。

4. 1人あたりGDPの推移:購買力平価換算値

続いて、購買力平価換算値についても眺めていきましょう。

まずは代表的な国の推移からです。

図4 1人あたりGDP 名目 購買力平価換算値 中南米・アフリカ
IMF World Economic Outlook Databaseより

図4が中南米・アフリカの代表国の1人あたりGDP(購買力平価換算値)の推移です。

基本的にはどの国も上昇傾向が続いています。

アルバ、バハマは購買力平価換算値でも日本と相応の水準です。

チリ、コスタリカ、アルゼンチン、メキシコは25,000~30,000ドルの水準に達しています。

ブラジル、コロンビアも20,000ドル前後、エジプト、南アフリカも16,000~17,000ドルとなります。

やはり購買力平価換算だと、為替レート換算値よりも大幅に水準が上方補正されるのが良くわかりますね。

5. 1人あたりGDPの国際比較:購買力平価換算値

続いて、2023年の購買力平価換算値の国際比較をしてみましょう。

まずは中南米からです。

図5 1人あたりGDP 名目 購買力平価換算値 中南米 2023年
IMF World Economic Outlook Databaseより

図5が中南米の2023年の1人あたりGDP(購買力平価換算値)です。

アルバが日本と同等でバハマ、パナマが日本と相応する水準ですが、ガイアナが日本を超えています。

ガイアナは南アメリカ北部のイギリス連邦加盟国で、人口80万人ほどの国だそうです。

イギリス連邦加盟国は経済水準が高い傾向にありそうですね。

この地域ではほとんどの国で1万ドルを超え、2万ドル以上も半数近くとなります。

つづいて、アフリカの国々も見てみましょう。

図6 1人あたりGDP 名目 購買力平価換算値 アフリカ 2023年
IMF World Economic Outlook Databaseより

図6がアフリカの1人あたりGDP(購買力平価換算値)です。

中南米と比べると、購買力平価換算値でも低水準となります。

セーシェルが4万ドルを超えるほか、モーリシャス、リビアが2万ドルをこえます。

1万ドルを超えるのがほかに、ボツワナ、ガボン、エジプト、南アフリカ、チュニジア、モロッコなどで、大半が1万ドル未満、半数以上が5000ドル未満です。

6. 中南米・アフリカの1人あたりGDPの特徴

今回は中南米とアフリカの1人あたりGDPについてご紹介しました。

中南米はOECD参加国やブラジル、アルゼンチンなど比較的経済水準の高い国も多く含まれています。

また、アルバ、バハマ、ガイアナなどイギリス連邦加盟国の水準も高い特徴がありますね。

アフリカでもイギリス連邦加盟国のセーシェル、モーリシャスが高い水準ですが、アルジェリア、チュニジア、モロッコ、リビアとアフリカ大陸北側で欧州と近い地域で相対的に高い傾向にあるようです。

とはいえ、欧州諸国と比べれば2023年でも総じて経済水準が低く、今後の発展が期待される地域でもありそうです。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年11月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。