インターンで3ヶ月もタダ働き!これって違法なの?(桐生 由紀)

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先日、インターンでタダ働きをさせられたというトラブルを描いたコジママユコ(@cotori9)さんの漫画『就活全滅日記』がX(旧Twitter)で話題になりました。

その内容はデザイン職のインターンシップとして働いていたにもかかわらず、デザイン職の募集は都合により中止となり、働いた期間の給料も出なかったというもの。

あまりに酷い話だと話題になり、ポストの閲覧数は1000万件を越えるなど大きな反響を呼びました。

コジママユコさんの『就活全滅日記』
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「就職活動のため」「職業体験ができる」という理由で企業のインターンシップに参加する学生は増えています。インターンシップは会社の実際の業務を体験でき、会社の社風を知ることができるため、入社後のミスマッチを防ぐ意味でも企業側、学生側双方にメリットがあります。

ただ、中には学生を労働力として業務をさせる通常のアルバイトと変わらないインターンも多くあり
「インターンだから」という理由だけで給料を支払わなくて良いと考えるのは大きな誤解です。

実際「社員と同じ仕事をさせられたのに無給だった」「最低賃金以下の給料で働かせられた」といった違法なインターンの相談も珍しくありません。

こうした「インターン」にまつわるトラブルが増えている今、雇用の専門家である社労士の立場から、インターンが違法になる事例や労働基準法との関係、インターンを採用する場合の企業側の注意点について解説します。

給料のもらえないインターンは違法なの?

無給のインターンが違法だという話を聞くと「インターンって給料がもらえるの?」そんな疑問をもつ人も多いと思います。

無給のインターン自体は違法ではありません。インターンとは、学生が在学中に就業体験をするプログラムです。学生が企業で就業体験をすることで、自身の将来のキャリアを考えたり、実際の仕事の現場を知るための機会になります。そのため無給のインターンが本来の形なのです。

しかし、インターンの内容によっては無給にすると違法になってしまう場合もあります。それは、インターンの内容が「労働」にあたる場合です。

インターンの内容が労働に該当するかどうかは「指揮命令を受けているか」が重要な判断基準になります。

具体的には以下のような要件を満たす場合です。

・会社から具体的な業務指示を受けている
・他の従業員と同等の業務をこなす事が求められている
・1日の拘束時間が長く長期間におよんでいる
・見学・体験型ではない

総じて、短期インターンは労働者性が認められにくく、長期インターンは労働者性が認められやすい傾向があります。ただし、実際にインターンが労働に当たるか否かは、前述した基準を踏まえ、その実態で判断されるため、短期インターンだから労働者ではないと安易に判断することはできませんので注意が必要です。

インターンで労働者性が認められないプログラムは以下のようなものです。

・社員の業務を近くで見学する
・模擬ケースの業務体験
・ワークショップ
・グループディスカッション

いずれも企業にとっては利益に直結しない内容であり、学生が企業の事を知るための機会として「体験」や「見学」が主目的となっているのが特徴です。

違法なタダ働きインターンの例

前述したとおり、無給のインターン自体は違法ではありません。

インターンの内容によっては、無給にすると違法になってしまう場合もあるのです。

では、違法なインターンはどのようなものがあるのでしょうか。具体例を見てみましょう。

【違法例①】無給で実際の業務をさせられる

企業の利益につながるような業務をさせ、労働力として扱っているのに無給だと違法になります。また、期間が長期になるほど労働力として扱われる傾向があり、実施の業務内容が通常のアルバイトと変わらないことも多いです。

例えば、従業員の指示を受けてリサーチを行なったり、コピーやファイリングなどの雑務の処理を行なったり、テレアポを行うなど、企業の利益につながるような実務を行う場合です。

こういった労働をさせたいなら通常の労働者と同様に給料を払って有給のインターンとすべきなのです。

【違法例②】給料が安すぎる

例え給料が払われていても、最低賃金以下で働かされている場合は違法になります。

例えば、東京の会社で7時間働いた時の給料が5000円だとすると、時給に換算すると714円になります。東京都の最低賃金は現在1163円なので最低賃金を下回っています。これは違法なインターンです。

また、インターンの労働時間を把握していない会社もあります。そういう場合は実際に働いた時間を把握して、受け取った給与額から1時間あたりの給料を計算してみてください。

給料が支払われていても最低賃金を下回っている場合は、違法になる可能性があるので「給料が払われているから適法」と安心せずに注意が必要です。

【違法例③】内定者の入社前の無給インターン

内定者は、卒業後、社員として働くことが予定されているため「入社前までに業務経験をしておく方が入社後スムーズに仕事ができる」などの理由で入社前に学生をインターンとして働かせる例を多く見かけます。内定者に実際の業務を行わせているのに無給だったり、最低賃金を下回っている給料しか支払わなかった場合は違法になる可能性があります。

また「内定者研修」という名目で入社前に研修を実施する例もあります。よく「内定者研修は違法なのか」という質問を受けますが、研修の参加を義務付けつつ給料を支払わなかった場合は違法になる可能性があります。

【違法例④】業務委託契約のインターン

「残業代を払いたくないから」「社会保険に入れたくないから」などといった理由で、学生インターンを業務委託契約にしている例があります。

業務委託契約が直ちに違法になるわけではありませんが、業務委託契約を結んでいても(1)会社側が業務内容や進め方の指示を行っている、(2)勤務時間や勤務場所の拘束があるなど、インターンの実態が労働者と判断されれば、未払賃金などの問題が発生します。

実際は、学生が会社からの細かい指示を受けずに仕事を行い、自分の裁量で仕事をできる例は少なく、実態は雇用契約に該当することが多いです。業務委託契約をインターンに適用するのは違法になる可能性が高いので注意が必要です。

インターンにも労働基準法が適用されるのか?

「インターンは通常の従業員と違うから労働基準法は適用されない」という誤解をしばしば見かけます。

通常の労働者であれば当たり前に適用している有給休暇や社会保険などを「インターンだから」という理由で適用しなくても大丈夫、もしくは適用されないと、会社側・学生側双方が誤解しているのです。

ただ、実際はインターンでも労働者であれば労働基準法は適用されます。

前述したとおり、インターンが「労働者」であるかどうかは、使用者の指揮命令下にあるかどうかで判断されます。インターンが「労働者」に該当すれば労働基準法などの法律が適用されます。

具体的には次のような法的な保護を受けることができるのです。

有給休暇を取得することができる

年次有給休暇は正社員のみの制度ではないので、以下の2つの条件を満たせばインターンでも有給休暇を取得することができます。

(1)継続して6か月以上勤務していること
(2)所定労働日数の8割以上出勤していること

付与される日数は、所定労働日数と継続勤務年数に応じてきまります。

1つ注意しなければならないこととして、内定者インターンの場合、正社員になった際に「勤続年数をリセット」という意識になりやすいことです。内定者インターンから正社員になった場合は、勤続年数は通算されますので注意が必要です。

残業代を請求できる

法定労働時間(1日につき8時間、1週につき40時間)を超えて労働させた場合、他の従業員と同じく残業代を支払わなければなりません。

無給のインターンで労働してしまった場合、給与の定めがない場合もあります。そういった場合は、最低賃金が適用されます。実際に労働した時間に最低賃金をかけた分の給料や残業代を請求することができます。

最低賃金を守らなければならない

時間に対して支払う給料が最低賃金以上でなければなりません。日給制の場合は、実際に働いた時間で日給を割った際に最低賃金未満になってしまわないように注意が必要です。

社会保険、雇用保険への加入義務が発生する場合がある

インターンであっても通常の労働者と変わりがありませんので、各種保険への加入が必要となります。

(1)労災保険:労働者であれば対象になります。インターン中に事故や怪我を負った場合に補償を受ける事ができます。
(2)雇用保険:週の労働時間が20時間以上で、31日以上雇用される見込みがある場合加入することになります。条件を満たしても学生は加入不要ですが、夜間部の学生や内定者インターンは条件を満たした場合は加入が必要になります。
(3)社会保険:所定労働日数・所定労働時間が通常の社員の3/4以上の場合は加入が必要となります。雇用保険と違って、学生でも対象になります。

インターンは通常の労働者とは違った扱いが出来るようなイメージを持つ方が多いのですが、インターンであっても、労働させる場合には通常の労働者と同じ法律の適用を受けますので、注意が必要です。

インターンを採用する場合の注意点

このように一口にインターンと言っても「実際どのような事をするのか」によって、その取扱いが大きく変わってきます。

では、企業がインターンシップを実施する場合、どのような事を注意して進める必要があるのでしょうか。

(1)インターンシップの目的を整理する

労働力として学生に業務をしてもらう事が目的なのか、職業体験を通して企業を知ってもらうための採用目的なのか、どちらにあたるのかを整理しましょう。

労働力として業務をしてもらう場合は、インターン生であっても労働者として扱う必要があります。職業体験として企業を知ってもらうためなら労働者にはなりません。学生が「労働者」として扱われるか否かによってその後の取り扱いが大きく違いますので、まずは目的をしっかり整理しましょう。

(2)契約書を締結する

労働者として認められる場合、企業は学生に労働条件を通知する義務があります。労働条件通知書(雇用契約書)を作成し交付しましょう。「インターンだから、アルバイトだから」契約書は不要という誤解をよく耳にしますが、労働条件の通知は学生であっても必要です。

また、職業体験が目的のインターンの場合でもインターン中の情報漏洩や不正利用等を防止するために誓約書を取り交わしておくことをおすすめします。

(3)ハラスメント防止対策を実施する

厚生労働省が発表した令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査によると、3割以上の学生がインターンシップ中にハラスメント被害にあったとされています。ハラスメントが発生すると、企業イメージが悪化し採用活動にも悪影響がおよびます。企業にもさまざまなデメリットがあるハラスメントはしっかり対策しておきましょう。

具体的には、ハラスメントを未然に防ぐために学生との接し方のルールを決め、研修を徹底し、実際にハラスメントが起こった場合は懲戒処分や損害賠償責任を負うことを従業員に認識してもらいます。万が一ハラスメントが発生した時のために被害をすぐに相談できる窓口を設置するのも1つの方法です。

企業はインターンを実施する際は、その内容や条件が労働に該当するか否かをしっかり確認しその内容に応じた対応と準備を行いましょう。また、法的なチェックや契約書の作成は専門家に相談することをお勧めします。

まとめ

無給のインターンが必ずしも違法になるわけではありません。ただ、その内容に応じて給料の支払いが必要になる場合があります。

インターンという名称にとらわれず「実際にどのようなことをするのか」が重要です。内容次第では学生との間に雇用関係があると認定され、適切に給料が支払われなければ、企業は労働関連法令違反が問われる可能性があるでしょう。

インターン生を受け入れた事によりトラブルが発生しないように、インターンの目的をしっかり理解し、その目的に応じた対応と準備を行うようにしましょう。

この記事が企業と学生、双方にとって有意義なインターンシップ利用の一助となることを祈っています。

桐生 由紀 社会保険労務士
大学卒業後、大手財閥系企業の管理部門業務に従事。第1子出産を機に専業主婦になるが、配偶者の急死により二人の子供を抱えてシングルマザーになる。Authense法律事務所に再就職し、法律事務所と弁護士ドットコムの管理部門の構築を牽引する。その後、Authense社会保険労務士法人を設立し代表に就任。現在は、弁護士法人でHR部門を統括しつつ、社会保険労務士法人の代表として複数のクライアントを支援している。プライベートでは男子3人の母。
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年10月4日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。