絵に描いた民主主義より独裁のほうがマシに思える悲しい現実

シリアのアサド政権が崩壊しました。西側政府は反政府勢力に資金や軍事援助を提供してきました。これは慶賀すべきことなのでしょうか。

バッシャール・アル=アサド大統領インスタグラムより

無論独裁よりも民主主義がいいことは否定しません。アサド政権を擁護するつもりもない。ですが独裁者を倒したらバラ色の民主主義が来るとは限りません。ことにアラブでは宗教の宗派や部族など対立や外国からの干渉もあって、内戦状態になる可能性は否定できません。

仮に平和裏に選挙が行われた結果「民主主義の手続きを踏んで」アフガニスタンのような原理主義的な国家となった場合、西側諸国は両手を上げて賛成するのしょうか。

イラク戦争でフセイン政権が倒され、アラブの春でリビアやエジプトがまともな民主国家になったでしょうか。腐敗と内戦と人権侵害が渦巻いたカオスとなりました。ですがイラクが大量破壊兵器があると嘘をついて戦争を始めた米英指導者を国際社会はプーチンにしたように責任を追求したでしょうか。またイラク戦争やアラブの春を煽った西側メディアは責任を取ったでしょうか?

さらに言えばセルビアを悪者にしたコソボ空襲も捏造とプロパガンダをもとに正当化されています。

またぞろ、シリアから大量の難民が発生して欧州に押しかけることも予想されます。

シリアのアサド政権倒した過激派組織の正体 「穏健」イメージを発信

HTSとはどのような組織なのか。

後に過激派組織「イスラム国」(IS)となるISIから支援を受けていたヌスラ戦線だが、13年には仲間割れし、16年にはアルカイダ傘下からも離脱することを表明。同年に北部の要衝アレッポを失った反体制派は政権軍に敗れて次々と支配地域を失い、北西部のイドリブ県一帯に押し込められた。複数の武装組織との衝突を経て、事実上の支配者となったのがHTSだった。

今後の最大の注目は、アルカイダやISと同根とも言える過激派組織を中心とする勢力が、支配地域でどのような統治を試みるかだ。

米国や国連はヌスラ戦線からの改名後もHTSをテロ組織に指定している。米中央情報局(CIA)の資料によると、HTSの今年時点での戦闘員は7千~1万2千人。地元住民からの「税金」や、フロント企業を通じた燃料の輸入や流通を管理して資金を調達しているとされる。過去には身代金目的の誘拐をしたこともある。組織の目標については、「アサド政権を倒し、スンニ派のイスラム国家と置き換えること」としている。

国連のシリア独立調査委員会が今年8月に発表した報告書によると、シリア北西部のHTSの支配地域では2月から大規模な抗議デモが広がった。HTSの治安部門が自らのメンバーや他の武装組織や政党のメンバーを拘束したことがきっかけで、住民らは拘束者の釈放や社会改革、ジャウラニ氏の解任などを求めたとされる。

当初、デモは平和的に実施されていたが、やがてHTSは武力で抑えつけ、参加者を逮捕したという。拘束者に対する拷問や処刑の例も多数報告されている。

西側風の民主主義を導入しようとするならそのための基盤が必要です。それなしに独裁者を排除すれば絵に描いたような民主国家になることはないです。

本邦だって法治国家とは言えません。裁判所や検察はグルになって冤罪を作るし、警察も法を無視する。裁判所は一票の格差が何倍も違うのに違憲と判断せずに「違憲状態」とインチキな造語を作ってごまかす。

何の法的な根拠もないのに一民間任意団体である記者クラブが役所の取材機会を囲い込む。これらはまともな法治国家ではありえない話です。

それほど「民主主義」「法治国家」の導入は難しいわけです。

【本日の市ケ谷の噂】
20式小銃付属のダットサイト、タクティカルライト、レーザー照射器は使用電池が全部違うので現場の隊員が困惑、との噂。

財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料 防衛

防衛(参考資料)

月刊「紙の爆弾」12月号に以下の記事を寄稿しました。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。

Merkmal(メルクマール)に以下の記事を寄稿しました。

月刊軍事研究に「ユーロサトリでみた最新MBTの方向性」を寄稿しました。

軍事研究 2024年 11 月号

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。

European Security & Defenceに寄稿しました。
JGSDF calls for numerous AFVs within Japanese MoD’s largest ever budget request

東京新聞にコメントしました。
兵器向け部品の値段「見積り高めでも通る」 防衛予算増額で受注業者の利益かさ上げ 「ばらまき」と指摘も

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
海上自衛隊の潜水艦メーカーは2社も必要あるか川重の裏金問題で注目される潜水艦の実態


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2024年12月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。