トランプ氏の外交方針とそれに対する相手国の対応を予想するのは極めて難しいものです。トランプ2.0の開始が迫る中、トランプ氏は人事を決めつつ、各種方針をフロリダの自邸、マールアラーゴでじっくり練り上げているのでしょう。
隣国カナダでは今日、フリードランド財務大臣がトルドー首相との確執から突如辞任しました。引き金はトルドー氏がフリードランド氏に財務大臣から違うポストに移ることを示唆したためで、将来的に元カナダ中銀総裁で英国中銀総裁も歴任した実力派、マーク カーニー氏を抱き込むつもりだったようです。真の背景はトルドー氏とフリードランド氏の間でトランプ氏の25%関税に対する意識の差とされます。副首相を経るなどカナダ政治界ではトップクラスに位置するフリードランド氏の辞任はトルドー氏に早期の総選挙を迫る形となるはずです。
トランプ氏対応をめぐってはカナダなど世界のみならず、アメリカ国内でもトランプ氏にすり寄る様子が見えてきています。象徴的なのがアマゾン創業者のジェフ ベゾス氏。トランプ1.0の際、ベゾス氏が支配するワシントンポスト紙を通じて痛烈なトランプ批判を行い、両氏の間には冷たい風が吹く関係とされました。ところがベゾス氏が進める宇宙開発(低軌道衛星カイパー)に関して、マスク氏がトランプ氏に近い関係となり、スペースXに有利な展開です。そのため、カイパーに関して政府との目標の約束は奇跡が起きない限り達成しえないとまでされています。そのため、ベゾス氏は明日にもトランプ氏と会談、政権の支持表明し、100万ドルの寄付というお土産をもっていくとされます。多くのアメリカ巨大企業は同様な状況に置かれています。
一方、いじめらえているのが医薬品の中間業者で中間マージンを抜く姿勢に対してトランプ氏が「叩き潰す」として大変な逆風になっています。つまりトランプ氏を怒らせれば既存のビジネス体系そのものが壊れてしまうほどの威力を持っているのです。昨日の民主主義の話ではないですが、これぞ、実質的な権威主義と言わずしてなんというのでしょうか?(但しアメリカ人も賢いので実質的には二枚舌対策でしょう。)
このような体制の中で対日外交、いや日本から見る対米外交をどうするか、簡単ではありません。ただ、政府だけが必ずしも、力を持っているわけではないことも事実です。時として民間ベースで話が展開し、それがきっかけで両国間の流れがよくなることもあります。
トランプ氏は石破氏に「理由なき若干の抵抗」を持っていることは事実でしょう。石破茂という人物について話には聞いているが十分に理解していない中で、今は優先順位が違うと考えている節があります。
ここからは私の推察です。
安倍昭恵氏と私邸でプライベートとはいえ、この忙しい時期にわざわざ会ったのはなぜなのでしょうか?たぶんですが、孫正義氏と翌16日にぶち上げ話で会談することも含め日本についてもう少し理解をすべく信頼しうる知己に話を聞きたかったという気がするのです。林官房長官が「コメントする立場にない」と明言していることからほぼプライベートでの会食だったと推測されます。ただ当然ながら「最近の政権はどうなのかね?」といった類の話は多少はあったと思われるし、昭恵夫人が日本を立てることをしないわけがない、よって日本とアメリカの連携関係を再確認したのではないかとみています。
今日、トランプ氏と並んだ孫氏が今後4年間で1000億ドル(15兆円)をアメリカに投資することに表明、それに喜び半ば冗談で「マサ、2000億ドル出せよ」との声に「やってみよう」と答えています。日米の強い相互関係をこのお2人が2日続けて作り上げたといってよいでしょう。
そんなこと言うと内閣や外務省は拗ねるでしょう。ただ、トランプ氏は1.0の時に経験したように普通のアプローチではだめなのです。安倍晋三氏がトランプ氏の懐に入れたのは当初は岸信介氏の武勇伝を耳にしたからかもしれません。ですが、会ってみて安倍氏の考える力、ブレイクスルーさせる実行力で絶対の信頼と同盟関係を作り上げたとも言えるのです。私はいくら政治家や公人と言えども最後は人間同士のつながりだと考えています。その魅力の見せ方に対して内閣が杓子定規なやり方でアプローチしてもそれはうまくいかないのです。
民間外交、これがキーワードです。そして日本政府もこの力とうまく付き合っていく器量が大事なのです。幸いにして日本のアメリカに対する熱い気持ちはずっと以前から変わっていません。野球やゴルフなどスポーツからビジネス、文化など双方が深くかかわっており、相互依頼になっています。それをトランプ氏はしっかり感じ取るはずですから日米関係が壊れることはないのです。
但し、個人としてのつながりが維持できるかどうかはその個人次第なのです。石破茂という一人間とドナルドトランプという一人間とウマが合うか、それ次第だと思います。アメリカとカナダの関係は基本的に一心同体ぐらいの関係ですが、トランプ氏とトルドー氏は決して腹を割れる関係ではなく、表層の付き合いなのです。ここが政治家同士の関係構築の難しさなのでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年12月17日の記事より転載させていただきました。