日産ホンダ経営統合への期待

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日産とホンダの経営統合の話が舞い込んできました。これを世界で先行して報じているのは日経だけ。怖いのは日経は時々大ポカをするので後でこれは誤報でしたという修正がないことを祈ります。

あくまでもこの報道が事実であるという想定の下に私の思うところを述べたいと思います。

私が大学生の時、ゼミのクラスで日本には主要自動車会社が8社(トヨタ、日産、ホンダ、三菱、マツダ、ダイハツ、スズキ、富士重工(スバル))あるが、これが維持できるとは思えず、いずれ3社程度に絞り込まれるだろう、という教授の分析は正しいと思いながらもいったいいつそうなるのだろう、と見続けていました。

急激な大同合併は日本人に不向きなのは大手銀行の合併による弊害を見れば一目瞭然でした。銀行のように似たような商品を提供している業種ですら合併によるいざこざがあるのがいかにも日本的であり、プロダクトや将来を見据えるよりも所属意識の強さの表れが前面に出てしまいました。

その中でトヨタが力技でダイハツ、スバル、スズキ、マツダを取り込んでいく中で孤高主義のホンダ、ルノーの一件で振り回された日産と三菱という構図が出来上がりました。トヨタグループはどちらかといえばトヨタ主導で強いリーダーシップという関係ですが、その力関係がいびつになり、様々な問題を引き起こしたことは記憶に新しいところです。

ホンダはEV化を宣言し、カナダで大型投資を進める一方、果たして本当に内燃機関の自動車を止めてよいのかという議論は再燃していることだと思います。日産についてはこのブログで何度か申し上げたように内田社長の引責というレベルではないところまで経営がヘタってしまった中で、トランプ政権の関税問題を含め、難題山積というところでした。三菱は東南アジアで一定のシェアを持つことと国内でもコアなファンがいる為、販売台数は目立ちませんが、個人的にはある程度の足腰はあるとみていました。

報道の通り、ホンダと日産が経営統合し、三菱がそれに追随するとなれば日本は二大勢力グループに集約され、世界1位のトヨタグループと世界3位のホンダ日産グループの誕生となります。

さて、私としては単に3つの会社を統合させるのは意味がないと思っています。まず、自動車業界を取り巻く未来像を見たうえでどのような大戦略を打ち立て、その上で3つの会社が持つ強みをうまく生かすしかないと思っています。

私なら内燃機関/HV/PHVの会社とEV専業、及び両陣営のクルマに必要なテクノロジー/ソフトウェアを供給する3つの会社に分けます。つまり合併の上で分社させます。基本的に内燃機関のクルマとEVでは電池搭載故にプラットフォームまで変える設計要素もあるのですが、それ以上に開発意匠が全く違うという点を重視しています。

クルマは先進国だけで走っているのではありません。寒冷地からアフリカの砂漠や道なき道までクルマは必要とされます。極端な話、内燃機関のクルマはガソリンさえ携行すればどこでも行けるのです。EVでは残念ながらそのようなワイルドな走りは出来ません。

一方、車は既に電気製品化を通り超え、ハイテクマシーンと化しています。その最先端を見据える努力をするには内燃機関の人間とEVの人間が一緒にいて足を引っ張りあうことは無駄だと感じています。最新の車を見る限り自動運転に更に一歩近づくとともに車内空間の利用価値を高めるテクノロジーをどれだけ提供できるかにかかっていると思います。

ところで私は今、ホンダ/ソニーが来年から受注を開始するアフィーラを予約しようか考えています。納車は26年になるようですが、いわゆるクルマを超えた最先端のテクノロジーに興味があるのです。スペックなどはよくわからないのですが、1月のCESに行けば展示されるようなので行くかどうか悩んでいます。価格は1000万円前後ではないか、とされまが、この手のクルマとしてはむしろアーリーアダプターとしての立場で検討しています。

ホンダと日産が経営統合した場合の直接的な経営効率の改善は目に見えて大きなものになると思います。多分ですが、ホンダ側から「なんで日産なのか?これは実質的な吸収合併か?」という声は当然あるでしょう。私は日産は素質としては良いものを持っていると思うのです。それを経営陣が錆びつかせたのです。

もう一つ、重要なのは日産は立派な生産手段と施設を持っているのです。ホンダ、日産を合わせれば例えば栃木の研究所あたりは重複もしますが、実に素晴らしい資産なのです。これを内燃機関側とEV側に分けてもおつりがくるぐらいの施設となります。また北米戦略については日産のメキシコ工場は80年代初頭、ぺんぺん草の生えた日産工場と揶揄されたほどでしたが、その後、北米の生産拠点として素晴らしい機能を果たしてきました。トランプ対策としてメキシコは内燃機関、そしてホンダが投資するカナダオンタリオ州はEVの拠点として分ければよいでしょう。

今回の経営統合は三つの会社が持てるものが違う点で割と相互補完がしやすい関係だと思います。ニッポン株式会社を再度飛躍させるためにも是非ともうまく話を展開してもらえればと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年12月18 日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。