S&P 500は大きく調整した。前回の記事では「シーズナリティとしてはクリスマスラリーが終わるわけではないが、ブラックアウト期間に入り始めたので徐々に手仕舞いのタイミングが始まる」としていたものの、6050ピンというテクニカルを信頼しすぎたせいで差し迫った大暴落を予想しそびれた。
12月FOMCは長らく利食いタイミングとして挙げてきたが、直前になってFOMC自体をあまり動かないイベントと見ていたのは失敗であり、金融政策自体は25bp利下げがちゃんとデリバーされたものの教科書的なタカ的利下げとなり、長期金利上昇と共に株式指数も暴落した。
S&P 500はFOMCデーでこれほど下げたのは2022年(!)以来となる。
5963の古い週足サポートはロスカットの手掛かりを提供したにすぎず、次に大統領線としていた5860も、水曜のFOMCデーの下げの終着点となり、また翌木曜も高寄りしたものの再び下げの終着点となったため、市場参加者の間で重視されていたことは分かったものの、Op Exに当たる金曜の寄り付き前に政府閉鎖騒ぎになったことで寄り付き前から豪快にブチ抜かれた。
5860はディーラーガンマの転換点でもあり、割れるとネガティブガンマ化も懸念されたが、これまた久々になったネガティブガンマ域でのOp Ex通過を経て金曜は寄り底になり大きく反発した。
前回の記事では6050周辺のポジティブガンマでの推移が続く想定だったので一連の動きを全く予想できていなかったが、セオリー通りと言えばセオリー通りの値動きではあったと言える。
個別銘柄オプションのOp Exは午後であり、引けにかけて直近アウトパフォームしたTSLAやMETAが弱く、アンダーパフォームしたNVDAが堅調なまま引けた。
大統領線ブレイク自体もそうだが、この調整は全体的に大統領選後に空中に構築されたポジションに対して厳しかったと言える。
暴落前のチャートのであまり意味がないかもしれないが、DBのシステマティック勢のポジショニングはここ5年で最高水準に達していた。これが1日3%近い下落に見舞われれば当然逆噴射する。その逆噴射が引け近辺に出やすいことも分かっており、それが「1日2%以上の下落の翌日は小十字」の根拠である。
2022年の経験則では三日目は少なくとも一度は小十字から更に下値更新するというものがありこちらは2024年にはあまりワークして来なかったが、久々に「少なくとも一度は」の「一度」が金曜に実現した形となる。
GSプライムブックは勢いよくショートを構築しており、その勢いは2022年以来の最高水準に達していた。これは今後のショートカバー要因となる。
BofAのFMSでは大統領選後に現金保有比率が史上最低まで低下しており、現金比率が4.0%を割り込んだことでBofAの売りシグナルをトリガーした。先週の調整がその振り落としになったかどうか。
2024年の自社株買いは2022年以来の堅調さとなったが、年末以降ブラックアウトに入る。
NASDAQ100には4.5%以上を占める銘柄群の総ウェイトが48%を超えてはいけないルールがあるが、 ブロードコムの4.5%クラブ入りに伴い総ウェイトは52%まで上昇したため、これを40%まで削減するリバランスが12月に入る可能性が取り沙汰されている。もっともAVGO暴騰の日から既にそれをトレードし始めた気もする。
NAAIMはようやく100に到達したところでドローダウンを食らったのが非常に美しかったが、調整を経て珍しく素直に悲観化している。GSセンチメントは小康状態が続く。
実質金利対比のリスクプレミアムは2000年代で最も低い水準での推移が続いており、長期的に見たバリュエーションは引続き高い。
テクニカルは祭りの後である。一度5860までブレイクされたものの、週が引けるまでには大きく回復しており、有効なブレイクにはならなかった。5832は新たにサポートとなる。レジスタンスについては瞬間移動で下げたのであまり見当たらない。もし金曜がなければ木曜の上ヒゲ陰線上限の5930がレジスタンスとなっていたと思われるが、金曜の上げがそれを無視したためレジスタンスが消えた代わりに安値がサポートとなる。
移動平均で見ると一旦ブレイクした25SMAを奪還しつつ50SMAに頭を抑えられた形となるが、50SMAが何度も反発を弾けるレジスタンスになるとも思われない。大統領線までの振り落としでポジションはある程度綺麗になったと思われるため、ここからはポジション構築に建設的になれるように思える。もし5832までブチ抜かれた場合は1月の決算期までリスクを取りづらくなる。
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編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2024年12月23日の記事を転載させていただきました。