人類は天災にどう打ち勝つのか?:拡大するロサンゼルスの大火災

日本でも大きく報道されていると思いますが、ロサンゼルスの大火災はこれを書いている9日の時点でも拡大の一途を辿っています。死者は現状5名とのことですが、消失した家屋は現状でも2千戸以上で、火災は5か所で起きています。木曜日遅くから週末にかけて再び強い風が予想されており、火災のエリアが現状より拡大すれば街の南北ルートが遮断される可能性もあります。仮に風が一時的に止んだとしても昨年10月以降雨らしい雨が降っていなかった完全な乾燥状態にあれば鎮火はたやすいものではないと思います。

ロサンゼルスの火災のようす

この火災ではハリウッド近くの高級住宅地も含まれ一瞬にして財を失った方が続出しています。もちろん、保険に入っていれば最終的には金銭的にはある程度カバーされると思いますが、そう割り切れるものではなく、復旧もたやすくないと思います。

ちょうど1年半前に起きたハワイ マウイ島の火災では復旧がポツポツ進んでいるという状況です。片付けてどんどん新しい家が建つという状況ではありません。日本でも震災の後、仮設住宅がまずありきでそのあとゆっくりと街の復旧が進む流れですからロサンゼルスのケースも5-10年かかるのかもしれません。どれだけテクノロジーが発展しても住宅を建てるのは人間が主体。そして木造の住宅一つにしても工種は30近くに上ります。それぞれが専門職であり、それぞれがいないと次のステップに入れないという制約がありますのでベルトコンベヤーのように次々と家が立ち並ぶということは起こりえないのです。

それ以上に住宅の所有者が同じような家をそこに建てるには極めて大きなモチベーションが求められます。もしも被災者が40代の方なら「よし!」と再建を目指して頑張れるでしょう。ですが、60代、70代になれば代替プランを求めるのが普通です。人のエネルギーとか「やる気」は予見可能で日常的にこなせる平坦な生活をすることで慣らされています。そこに想定外の事態が生じると元にあった状態に戻そうとするエネルギーが若い時のように出てこず、むしろ方向感をなくし、思考が止まってしまうのが普通だと思います。

東日本大震災における復興ではインフラなどは概ね8年程度かかりました。住宅は数からみれば概ね復興され、当初の仮設住宅居住者は福島県を残すのみとまで減ってきています。宮城、岩手の復興は早かったかもしれませんが、原発問題があった福島は仮設住宅からは退去したとしても実質的には同じ形での復興はしないのでしょう。

同様に能登震災も厳しい現状にあると思います。もちろん復興は進めなくていけませんが、地震の巣であることがわかっている中で2方向非難の選択ができない山間部でそのまま復興を進めるがよいのかは自治体の将来的なライアビリティ(過失責任)の問題が生まれてくると思います。

私が天災を意識し始めたのはこの10年ぐらいかもしれません。我々は一年の間に春夏秋冬を感じ、時に寒く凍えながらも暑く太陽が照り付ける日もあるというサイクルが当たり前のように繰り返されると思っていました。が、少しずつその歯車はずれ、異様に暑い夏、そして先日は年を超えた紅葉のニュースもありました。ここバンクーバーも本来なら12月には寒波が一回ぐらい来るのですが、今年はまだ一度も氷点下になっていません。ロスの森林大火災も本来なら夏に起きやすいものがこの時期に起きたというのが私には衝撃であります。

地震、台風、ハリケーン、洪水、山火事、竜巻…過去起きたことがないような様々な自然災害が突然襲ってくる、こんな時代において我々はどうやってわが身を守るべきなのでしょうか?

私はまず自分が必要とする様々な重要情報やデータは紙から電子化に切り替えるようにしています。そうすることでパソコンなりスマホが一つあれば必要最低限の情報はすべて引き出せます。私はパソコンとスマホは切り離して考えるべきと思います。なぜなら災害時にスマホをなくしたり、壊したりする可能性があり、その場合、データへのアクセスが難しくなるからです。ところがパソコンの場合、データはクラウド上ですから誰のどのパソコンからでも欲しい情報はアクセスできるのです。よって気になる方は重要電話番号をパソコンのクラウドを使ってインプットしておいた方がいい気がします。LINEはパソコンでもできるので大丈夫だと思います。

次に自分を身軽にしておくことも意味があると思います。「住めば都」と言いますが、住めなければ地獄です。その場合にどこにでも容易く移るのに最も大事なことはその方のメンタルだと思うのです。東京がだめなら名古屋があるさ、とか北海道から九州に来ましたぐらいのフレキシビリティを常日頃から頭で思い描くことが大事だと思います。「もし次に住むならどこがいい?」ということですね。

資産をどう守るか、これも大きな意味があります。不動産事業を営む者として言わせていただければ集合住宅に破壊的ダメージが起きた場合、復旧は極めて難しいと思います。私が過去作った集合住宅でも販売関係の法律図書には建物が住めない状態になった場合の規定がありますが、それはあくまでも法律図書上の話で多数の方が住む中での災害を想定するならば一概に設定したルールが適用される実現性は低いと思います。つまりもしも東京で大震災が起きてマンション群に大きな被害が及んだ場合、住宅復旧は東日本大震災の比ではないと思います。よってマンションは安全という神話は私はほとんど信じていません。

「災害は忘れた頃にやってくる」と言いますが、この格言は「災害はいつでもやってくる」に言い換えたいぐらい、我々の住む地球は各方面で異常が生じているように感じます。食べ物も非常食を用意することも大事ですが、調理の仕方1つ知らなければ生き延びようがないともいえないでしょうか?

便利な世の中になった分、逆に災害が起きた時のギャップは大きいと思います。少なくとも携帯が使えない時の対策はとっておいた方がよさそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年1月10日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。