12月上旬、6年ぶりに宮崎県の南部・日南を訪ねました。
旅の始まりは宮崎空港から。
宮崎空港駅から普通列車「サンシャイン・ミヤザキ」(イケザキじゃないよ)号に乗って一駅、田吉駅で下車。そこから日南線に乗り換えて宮崎県の県南部を南下していきます。
日南線と宮崎空港線の乗換駅、田吉駅はローカル色満載の駅。寂しいですが駅の向こうに宮崎空港が見えるので飛行機好きの方はそれなりに楽しいと思います。
飫肥って読める…?
トコトコと列車に揺られてやってきたのは日南市の中心駅、飫肥駅です。
さて問題。「飫肥」何と読むでしょう。
…
……
………
正解は、
「おび」でした。読めないですよね。
日南市は飫肥町や油津町を含めた4町村が1950年に合併してできた町です。昭和の大合併の先駆けとなった町で合併の際は新市名で大いにもめたらしいですが、日向の南、日本の南で日南という全く新しい地名を生み出して決着したそうです。
飫肥という地名は平安時代には存在していたそうで、詳細は不明ですが「大火(おおび)」から来ているのではないかといわれています。「飫」は「食べ飽きる」の意味の字ですが、超えるほど食べて食べ飽きてしまったのか…それほど食料に困らない肥沃な地ということなのかと思いましたがそういうことではないようです。
飫肥は江戸時代、飫肥城のもとで栄えた城下町でした。重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、昔ながらの街並みが保存されています。
古民家をリノベしたカフェへ
飫肥の街並みの中心部にある「こだま」さんは明治時代に建てられた薬問屋「小玉家」をリノベーションしてつくられたギャラリー兼食事処です。ちょうど着いたのがお昼時だったので見学がてら立ち寄ることにします。
物腰の柔らかい奥様に案内されて通された部屋は二間続きの畳の間。実家に帰ってきたような懐かしさを感じさせます。
棚に置かれた薬箱が、ここがかつて薬問屋だった名残。下毒丸、痰咳丸など各種の薬が用意されています。
お庭を眺めながら食事をすることもできました。
いろいろと旧家を眺めて回っていたら食事がやってきました。こちらで頂いたのは宮崎名物チキン南蛮。やわらかな若鶏の肉にタルタルソースが絡まっていい味出してくれています。これも宮崎名物のマンゴージュースも絶品でした。
飫肥の中心だった飫肥城跡へ
宮崎名物を堪能し、こだまさんを辞去。裏手にあった蔵カフェをのぞいて、いよいよ飫肥城の近くに向かって歩いていきます。
飫肥はかつて伊東家の城下町として栄えました。一時期は九州全土の制圧を目論む島津家と確執があり戦いの舞台ともされてきた場所です。現在、城はありませんが広大な城跡が伊藤家の権威を物語っています。
白壁の隅に杉の木が建っています。この杉は四隅に立っており、その交叉点上に石が埋められています。これらの杉は「しあわせ杉」と呼ばれており、この交叉点に立つと四隅の杉から幸せのパワーがもらえると言われています。その説明の立て看板を見てすぐこの場所に立ち、しばらくの間パワーを独り占めしていました。
城内には明治時代に外交官として活躍した小村寿太郎生誕の地の碑が建てられています。城の外には記念館もあり、小村が町を代表する偉人であり今日もなお讃えられていることがわかります。
飫肥城の目の前に広がる小京都
飫肥城を出てすぐ、東南側にかつての城下町の様子を偲ぶことができる街並みが広がります。この風情ある町並みは九州の小京都と呼ばれ親しまれています。
ここは横馬場通り。かつて武家屋敷の並んでいた城下町です。こんな風情ある町並みを歩いていると江戸時代にタイムスリップしたかのような錯覚に陥りますね。
ここはかつて飫肥の上級家臣だった伊藤伝左衛門の邸宅。これをリノベーションして「茜さす飫肥」として一党貸しの宿泊施設としています。
武家の世界に思いを馳せながら、かつて武士たちが住んだ家からゆっくり庭を眺めることができるなんて、なかなか他ではできない宿泊体験です。宿泊者がいないときは敷地内に入り、庭園をゆっくり見ることができます。
かつて町の学校としても活用された振徳堂
城跡の東、武家屋敷を抜けた先にある木造建物は振徳道とよばれる教育施設。1831年に飯肥藩13代祐相公により開校され、孟子の教えにあたる「又従而振徳之」から振徳堂と名付けられました。学校として多くの優秀な方が輩出されており、先に名前の出た外交官、小村寿太郎もここで学び知識を蓄えたと言われています。
いかにも寺子屋!といった室内。日本の南の端から出世を祈願しつつ勉学に励み、のちの日本社会を築いていきました。
戦後学校としての役割を終え、一時期保育所として活用されました。時代を通じて教育に深く携わってきた建物です。古の偉人たちが学び育っていった学校で育てられた子供たちもさぞ立派な大人になっていったことでしょう。
平日の城下町は静かで人混みもなく落ち着いて街を歩くことができました。みなさんもゆったり飫肥の城下町の散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年1月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。