ガザ停戦合意、ようやく:イスラエルとパレスチナが合意すれば当面は沈静化か

まずは停戦までこぎつけた関係者、特にアメリカ、カタール、エジプトの尽力を称えたいと思います。ガザ問題が起きた時、イスラエルとハマスのいつもの戦い程度で終わるのだろうと高をくくっていましたが、23年10月7日のハマスによるイスラエルへの不意打ち攻撃からここまで来るのに実に1年3か月かかりました。イスラエルは中東では圧倒的戦力を持ち、不敗を続けていますが、今回は途中からヒズボラがイスラエルの北側から攻め、いわゆる両面作戦を展開されたあたりでイスラエルの怒りは頂点に達していたと思います。

バイデン大統領とネタニヤフ首相 2023年9月 イスラエル政府HPより

ウクライナでの戦争が継続する中で「イスラエルよ、お前もか」という声が高まり、第三次世界大戦のきっかけになるのではないかという懸念も聞かれました。

今回の停戦に関してブリンケン国務長官の役割は大きかったと思います。停戦交渉のためにどれだけ現地で調整をしたかと思えばトランプ政権に変わる前に停戦という区切りを迎えられたことは氏の努力が報われたということでしょう。

ブリンケン米国務長官(左)(2024年6月26日、米国務省公式サイトから)

この停戦は6週間でその間に恒久的な休戦/終戦を含めた交渉が行われ、交渉次第では第2弾、第3弾というステップを踏むのかもしれません。今後の交渉はアメリカは国務長官につくルビオ氏と中東担当特使になるウィットコフ氏が主導するのだと思いますが、停戦交渉に同席したウィットコフ氏へのトランプ氏の指示はハマス側への停戦受け入れに強い圧力だったともされます。

仮にこの停戦が進展し、休戦/終戦となり、ガザ地区の将来の統治方法についてもイスラエルとパレスチナが合意に至れば当面は沈静化すると期待しています。その間にトランプ氏がイスラエルとサウジアラビアの国交樹立を推し進めるとみています。そうするとイランの立場が難しくなり、中東の不和の要素が一つ、欠けることになります。

パレスチナにしろレバノンにしろハマスやヒズボラといった原理的で暴力的な勢力が不必要なまでにそれぞれの国内/地域で力を持ったことは不和の理由の一つでもありました。私は逆説的ではありますが、パレスチナを国家として承認し、国連に加盟させ、監視をするような形にした方がよいのだろうとみています。イスラエルとヒズボラとの闘いに絡み、シリアのアサド政権が崩壊したこともあり、レバノンの国内統治は以前に比べればしやすくなるとみています。

今回の一連の戦争で見たのはイスラエルが二面作戦を強いられた間にヒスボラのシリアでの影響力が落ちてこちらの二面展開が機能しなくなったというのが私の理解です。つまりシリアのアサド政権崩壊はヒズボラの稚拙な戦略によるところが大きく、今回の最大の犠牲者はガザ地区ですが、シリアがとばっちりを受けたということではないかと思います。

イランはどう出るか、ですが、現在ロシアと戦略的パートナーシップ締結に向けた交渉が行われているとされます。これはイランの力が落ちて自国だけでは太刀打ちできないことを如実に表したものです。ですが、ロシアがそこまで強い勢力を持ち続けられるかは疑問です。

個人的に思うのはプーチン氏はロシアの実質「皇帝」として君臨したのですが、いかんせん在任期間が長すぎだと思います。この間、人材が育たない上にイエスマンばかりが増えてしまっているのは中国と同様の弱点であります。トランプ氏とプーチン氏はウクライナをめぐる交渉を何らかの形で行うわけですが、そのすべてをプーチン氏が裁かねばならない自営業者的非効率性を伴っています。その中でイランと戦略パートナーを結んでも双方にとって精神的拠り所程度にしかならないのではないかという気もします。

和平という点では2025年は変化がある年になりそうです。当地の報道は今回の停戦についてあまり良いトーンではない(イスラエルは渋々、やむを得ずという感じの報じ方です。)のですが、解決に向けて前を向いているのは良い知らせであることは間違いないと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年1月17日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。