東京都議会の自民党会派で、政治団体の「都議会自民党」が政治資金パーティー収入など計約3500万円を会派の政治資金収支報告書に記載しなかったとして、会派の経理担当職員が政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で略式起訴された。
同団体の政治資金パーティーでは、都議1人あたり50枚、金額にして100万円分の販売ノルマがあり、それを超えて100枚目までは全額を、101枚以上については半額を会派に納めずに手元に残すいわゆる「中抜き」が行われ、会派と都議側の収支報告書に収入として記載されていなかったということだ。
また6年前の政治資金パーティーでは、パーティー券を配る際、ノルマを超えた分のパーティー券の扱いについては、都議などが集まる総会の場で「ノルマを超えた分はお好きにどうぞ」などと説明されていたということだ。(『都議会自民党 会計担当者を略式起訴 政治資金パーティー実態は』NHK記事 2025年1月17日)
都議会自民党幹事長の小松大祐都議は、記者会見を開き、今回の政治資金パーティーの問題について、
「長年にわたって続き、会派全体の責任と重く受け止めている」
として、政治団体「都議会自民党」を解散する考えを表明し、近く収支報告書を訂正する考えも示した。
記載していなかった都議の人数や名前、それぞれの不記載額については、収支報告書の訂正が確定したあとに会見を開いて公表するとのことである。
政治団体を解散するとしても、その政治団体が開催した政治資金パーティーについて、政治資金規正法違反が問題になっているのであるから、当然、それについて必要な措置をとった上で解散するべきだ。
その際重要なことは、都議会議員が手にしていた裏金の「納税の問題」について、ケジメをつけることである。
昨年10月27日投開票の衆議院議員総選挙では、自民党は56議席を失い、自公でも215議席と、過半数を大きく割り込む結果に終わった。その大惨敗の原因の大半が、自民党派閥政治資金パーティーをめぐる「裏金問題」にある。
自民党派閥の政治資金パーティーをめぐって、ノルマを超えた売上が「収支報告書に記載不要の金」として派閥側から所属議員側に「還付金」ないし「留保金」として供与され、実際に、所属議員側では、政治資金収支報告書に記載していなかった。
総選挙では、野党側が、
「『裏金議員』は『脱税』『泥棒』」
と批判したのに対して、自民党側では、当事者の議員などが
「裏金ではなく不記載であり、記載義務違反という形式的な問題に過ぎない」
と主張したが、そのような「言い分」はほとんど無視された。
「裏金議員がほとんど処罰も受けず、裏金について所得税も課税されず、納税も全く行っていないこと」「裏金問題の事実解明がほとんど行われていないこと」について、自民党に対する国民の強烈な反発不満が生じ、自民党の惨敗につながったのである。(【「裏金問題」という“ブラックホール”に落ちた自民党】)
「裏金議員」のほとんどが刑事処罰を受けなかったのは、検察の刑事処分の判断によるものであり、議員側の責任ではない。しかし、政治資金収支報告書の訂正と、裏金についての所得税の納税は、議員本人が判断すべきことである。
国会議員の場合は、公設秘書、私設秘書等が複数いて事務所で政治資金の会計処理が行われているので、派閥から「還付金」「留保金」として供与された金銭を、政治資金として管理していたとして(実際に、そうであったかどうかは別として)、その金銭は「政治資金」であったと説明することは一応可能だ。
すべての「裏金議員」が、検察の示唆を受けて、派閥側収支報告書の訂正に合わせて、所属議員も政治団体の収支報告書の不記載だったとして訂正し、所得税の課税を免れる結果になった。
一方、都議会議員の場合、秘書の数も議員によって異なり、事務所による政治資金の収支管理がどの程度行われていたのかも不明だ。
しかも、安倍派の政治資金パーティーのように、いったん派閥に納入した上で国会議員側に「還流」していたのではなく、すべて都議側が留保していたもので、その金額も、ノルマ超の売上のすべてが都議側に入るわけではない。派閥から都議への「政治資金の寄附」というより、パーティー券販売に応じた報酬の性格が強かったと考えられる。
都議個人が、政治資金パーティー券の売上の一部を個人の金と混同させていた場合、それは「政治資金」ではなく個人所得であり、所得税の納税をするのが当然だ、
自民党派閥政治資金パーティー問題では、裏金の処理の時期が、昨年3月の確定申告の時期と重なったこともあって、国民の激しい怒りを招き、確定申告を拒否しようという動きにまでつながったことは記憶に新しい。
今年も、これから確定申告の時期を迎える。
都議会自民党の各議員が、個人の手元に入っていた裏金を、今回、政治団体の収支報告書の訂正をして、所得税の修正申告も行わない、という態度をとった場合、都内の各税務署では、昨年の確定申告と同様の事態が起き、それが、今年7月の都議会議員選挙での自民党への猛烈な逆風につながることは必至だ。
都議会自民党幹事長は、不記載があったとされる都議について、手元に留保していたパーティー券の売上の一部を、どのように管理していたのか(個人の資金と混同していたのか、政治資金として別途管理していたのか)、その使途等について自主申告を求めた上、個人に帰属していたと認められる都議については、収支報告書の訂正ではなく、所得税の修正申告を行うように指導すべきであろう。
自民党都議会議員にとっては、今年の最大のイベントと言える都議会議員選挙に向けて正念場である。