1年先まで予約が取れない人気店が抱える「経営リスク」

白金台にある人気のイタリアンを訪問しました。ジノリのお皿(写真)で独創的なイタリアンが楽しめる名店です。毎回来店時に次回を予約してリピートしているお店です。

1年近く先まで予約が取れないお店なので、今回も帰り際に忘れないように次回の予約をしようとしたら、今日は予約取れませんとお断りされてしまいました。

人気店になり過ぎて遂に予約できなくなったのかと思ったのですが、理由は別のところにありました。

シェフの体調です。

1年先までパンパンに予約を入れて営業していたところ、少し前にシェフが腰痛で厨房に立てなくなり、予約をキャンセルせざるを得なくなってしまったそうです。

キャンセル分を別の日に振り替えようとしても、予約がきっちり入っていて代替日がすぐに調整できません。お店の都合でキャンセルしたのに振替対応が迅速に出来ない。結果的にお客様のクレームになり、スタッフも忙し過ぎてストレスになってしまったのです。

そこで、今後も同じようなリスクがあることを考慮して、予約を半年先までにしてあまり先の予約は取らないシステムに変えたということでした。

お店の予約が先まで入っていれば、そこまでの売り上げが見込めますから安定した経営が実現できます。

一方で予定が入っていれば、お店側の事情で予約を柔軟にコントロールできず、スタッフの体調不良や店舗の設備の故障といったトラブルに対応することが難しくなります。

AndreyPopov/iStock

地震被害で店内が使えない、スタッフがインフルエンザに感染したり交通事故にあった、食中毒が発生した、空調機器の故障した、停電といった想定外のリスクは意外と多いのです。予約が先まできっちり入っていればいるほど、逆に経営リスクが大きくなるともいえるのです。

予約が入らないのもリスクですが、予約が先まで入り過ぎているのもリスクになる。これは盲点でした。

私が定期的に通っているお店の中には、1年以上先の予約を取っているお店もあります。常連のリピートだけで経営が成り立つ盤石な状態だと思っていましたが、逆になんだかちょっと心配になってきました。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年1月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。