サンプラザ解体計画、議会の90%が異議なしってどうなの?

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最近、中野サンプラザの解体問題が全国的な注目を集めています。特に懸念されるのは不透明な事業計画です。

中野区議会では、高層タワーマンションの建設理由として「質の高い住民を招き税収を上げる」と説明していますが、これでは区民のための再開発とは言えません。

議会全体でも土地売却に固執し、90%の議員が異議を唱えていない状況です。結果として、事業費は膨れ上がり、2022年12月には400億円の増加が発生し、最終的には3539億円に達しました。議会はこの状況を見過ごしていたのではないでしょうか。

例えば、豊島区や渋谷区では『定期借地権契約』を用いた開発が行われていますが、中野区では『敷地売却』を前提とした契約が締結されています。

区民が知らないうちに、中野サンプラザと区役所の土地が約1000億円の価値にもかかわらず、半値以下の400億円でディベロッパーに売却されようとしているのです。

さらに、これらの詳細は区民には知らされておらず、土地売却と定期借地のシミュレーションが行われなかったことに大きな疑問が残ります。

なぜ他の自治体の事例を参考にして、適切な計画を議会で審議・議決するまで都市計画を延期しなかったのでしょうか。区民の財産を守りつつ新しい公共施設を建設することが求められるべきです。

参考までに、渋谷区では「前払地代方式・70年定期借地権」が採用されています。この方式では、前払地代には一括課税されず、売却せずに同等の金額を受領でき、70年後に更地で返還されるメリットがあります。

中野区では「土地売却」が前提となった計画が進行していますが、他自治体の事例を参考に「定期借地」などのシミュレーションを行い、適切な事業計画を議会に示すべきです。そのためには、計画の数値化と比較分析が必要です。区民のための資源活用が喫緊の課題です。

筆者は中野区に50年以上在住する根っからの中野っ子です。疑問に思ったことは率直に申し上げますが、瑕疵がないことが証明されれば、むしろ堂々と再開発に着手することが可能となるでしょう。

筆者は解体に反対の立場ではありません。区民にとってメリットがあるならば問題はないと考えています。区議会は区民の疑問に対して真摯に対応する必要があるでしょう。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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