日産とパナソニック

日産とパナソニック、共通点は何でしょうか?

ちょっと強引な物言いと思われるかもしれませんが、両方とも会社や組織が消えるかもしれない、であります。

日産はホンダとの統合話がほぼ破断状態と報じられ、一応2月下旬ごろに見込まれる「正式発表」を待たねばなりませんが、双方が感情論になっており「よりを戻す」のは難しいのかもしれません。その場合、日産は単独で生きて行けるのか、という疑問が生まれます。これが日産ブランドへの懸念です。

もう一つ、パナソニックはグループ再編を発表しました。パナソニックは現状、事業会社が6つあり、BtoBとBtoCが混在しています。その中で消費者向け事業が今一つ冴えないため、「パナソニック」という一般消費者向けの事業会社、つまり白物家電などを扱う部門ですが、をバッサリ再編し、スマートライフ、空質空調・食品流通、エレクトリックワークスの3つに分けるのです。更にこれまであったエンタテイメント&コミュニケーションと称される黒物家電部門が無くなります。まだ決定はしていないものの「ビエラ」ブランドのテレビの行方も不透明、またブランドとしてのパナソニックは残るとされるものの商品名として残すかどうかは検討中とされます。

パナソニックはこの再編を発表したところ株価が暴騰し、株式市場は好意的に受け止めています。BtoCは儲からない、これを囃したものと思われます。確かソニーだったと思いますが、エレキのBtoCについては儲からないので減らすといった発言があったと記憶しています。かつては製品に対する信頼度はブランドネームにありました。特に家電や一般消費者が手にするものはブランド第一主義だったと言ってよいでしょう。またマーケティングの観点からもブランド力をいかに育てるかは基本中の基本でした。

ところがSNSとターゲットマーケティングが当たり前になると汎用的なブランドネームではなく、一部のオタク、つまりアーリーアダプターが飛びつくような商品を開発販売し、アーリーマジョリティがそれに続くという戦略が理にかなってきたように見えます。テスラというブランドはその典型でした。日本の家電やアマゾンで売っている一般消費者向け商品もブランド第一主義ではなくなりつつあります。古いですが、バルミューダの高級トースターも一つの例でしょう。

では日産。個人的感想を申し上げると世の中に似たような車が数百種あり、それが市場でパイの奪い合いをしているわけでその中で差別化を図るのは極めて難しいのだろうと思います。特に内燃機関とHVとPHVとBEVが混在する中で消費者はまずその方式を選択をするでしょうから内燃機関重視の会社ですとその時点で第一次選考にも残れない確率が高まります。

過去20年ぐらいは値下げすれば数百種のクルマから選ばれる可能性はありました。値引きは日産の常套手段で北米では安売りの日産と噂されていました。ところが今の消費者は安いから買うのではなく、欲しいから買うのです。スズキ「ジムニーノマド」は4月に発表後、5万台もの受注を抱え、受注一時中止となりました。この現象はその典型だと思います。

つまり日産もパナソニックも共に個性を出し切れなかったというのが私のみる共通点だと思います。パナソニックの前身、松下はかつて「マネシタ」とも揶揄されました。他社が出したものをより改良、改造し、「うちはこれで勝負でっせ」でした。総需要が大きく、皆が同じようなものを求める時代はそれでよかったのです。

日産は東の日産、西のトヨタというプライドの中で常にトヨタを意識していました。セドリックとクラウンの戦いなどはその典型でした。その戦いに敗れ、日産は個性を出そうと試みたのです。うまくいった商品はいくつもあったと思います。レンジ エクステンダーのついた「ノート」もよかったのになぜか世界展開しなかったのです。日産は自らマーケティングを諦めてしまった、そんな風にすら見えるのです。

1990年代後半、日産が倒産するかもというギリギリの状態の時、ゴーン氏がやってきて矢継ぎ早にリストラを進めました。しかし、その後の紆余曲折で日産には外資に対するアレルギーが出来てしまいました。よって国内で比較的独立独歩だったホンダとの組み合わせは斬新だったのです。今回報道のように破談となれば日産を救うのは誰なのでしょうか?鴻海が触手を伸ばす可能性が指摘されていますが、日産は外資アレルギー故にホンダとの縁談を選んだはずです。私は日産の経営陣が鴻海と一緒になることをたやすく受け入れるとは思えないのです。

日産の内田誠氏は今期で退任すべきでしょう。しかし優秀な人材もどんどん辞めてしまったので次がいないという試練にあります。既存の枠組みから飛び出せる人をどうにか探して社長に迎えるべきでしょう。再生可能確率は私は5分5分程度と見ます。傘下の三菱自動車をどうするかも重要な判断材料になりそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月6日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。