石破茂首相のトランプ米大統領との初会見は日本のメディアの報道を見る限りでは、左派メディアを除けば「成功」、「予想外に良かった」と評価されている。当然かもしれない。期待が大きければ評価は辛くなるが、会見前から首相の訪米、トランプ氏との初会見については、メディアの期待は低かったからだ。会見が大きな支障なく終了したのだから、「先ずは成功」と及第点が付けられるのだろう。期待が大きければ、多分、様々な辛評が飛び出したことだろう。
日米首脳共同記者会見、首相官邸公式サイトから、2025年2月8日
海外に居住する日本人の一人として、世界を騒がせている超人気者トランプ大統領と日本の首相が会見、それも大統領就任後、イスラエルのネタニヤフ首相に次いで2番目の外国人首脳として歓迎された、という‘事実‘はやはり嬉しい。トランプ氏が日本の経済的、軍事的重要性をそれだけ認識していると受け取れるからだ。
日米間に問題がないわけではない。両国間の不均衡な貿易収支問題、最近では日本製鉄のUSスチール買収問題など山積している。それらの問題は扱いかた次第では日米間の関係を険悪化させるだけの爆発を含んだ難問だ。貿易収支問題では、トランプ氏は記者会見で相互関税という表現で必要ならば日本製自動車への関税の可能性などを示唆している。
トランプ氏がホワイトハウスの主人にカムバックして以来、ワシントン発のトランプ報道は日々、世界のメディア界を賑わせている。日本のメディアも例外ではない。日刊紙の国際面はトランプ氏の言動で溢れている。トランプ氏の大統領再選を苦々しく報道してきた左派系メディアも同じだ。トランプ氏が世界の政治を大きく変えようとしているからだ。
トランプ氏関連の報道で気が付く点は、関税、不法移民問題からウクライナ戦争、パレスチナ問題などが大きく報道されているが、トランプ氏の「常識革命」については抑え気味な報道が目立つことだ。トランプ氏はバイデン前政権下で行き過ぎたジェンダー問題などの軌道修正に乗り出し、宗教問題について強い関心を有している。特に、日本のメディアはトランプ氏が第2期政権で実施したいと考えている「常識革命」については、かなり控えめな報道に終始している。
トランプ米大統領は6日、ワシントン市内で開かれた全米祈祷朝食会で演説し、米国は「神の下の一つの国」であり、宗教心を取り戻すことが重要だと強調。反キリスト教的な偏見を根絶するため、ホワイトハウスに「信仰オフィス」を設立し、その責任者に自身の宗教顧問であるポーラ・ホワイト牧師を充てると発表した。トランプ氏は「宗教の自由がないところに、自由な国はない」と述べている。
日本では現在、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の解散請求問題がある。同問題は安倍晋三元首相の暗殺事件を契機に共産党系弁護士、左派メディアが実行犯の供述をもとに旧統一教会叩きを始め、メディアの圧力を受けた当時の岸田文雄首相が法の解釈を変えて旧統一教会の解散請求を持ち出した経緯がある。文部科学省は今日、「先ず解散ありき」で、東京地方裁判所に提出した陳述書を捏造するなど、旧統一教会の解散に突進しているが、そのプロセスで信者たちの「信教の自由」を蹂躙している。まさに、文部省の対応は「反キリスト教的な偏見」といえるだろう。
ところで、日本の大手メディアは過剰なLGBT運動を支援し、旧統一教会問題では率先して旧統一教会潰しに加担してきたこともあって、人の性別を「男性と女性」の二つのみとする大統領令に署名して「トランスジェンダーの狂気」を排除、「宗教の自由がないところに、自由な国はない」というトランプ氏の一連の「常識革命」の発言は快いものではなかったはずだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年2月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。