誰もが無意識に陥る「目的と手段の入替わり」

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セミナーや講演で「お金は目的ではなく人生の夢や目標をかなえるための手段」と、個人投資家の皆さんに何度も繰り返し説明しています。

だから資産運用を始める前に、人生の夢や目標を考える必要があるのです。人生の夢や目標が明確になれば、次にそれを達成するために必要なお金を考えるというステップです。

お金とは、あくまで自分の人生でやりたいことを実現するための手段なのです。

ところが、ほとんどの投資家は資産運用を始めるとお金自体が目的になってしまいます。自分の人生の夢や目標とは関係なく、とにかくお金を増やすことに夢中になるのです。

個人投資家にお金の正しい知識を啓蒙すべきマネー誌の人気の定番特集さえ「投資で1億円作る」といった最初に金額ありきになっているのは、何とも皮肉なものです。

しかし、このような目的と手段の入替わりは、お金に限らず多くの人が無意識にやっていることでもあります。

私はパーソナルトレーニングでベンチプレスを毎回やっています。目標回数が設定されていますが、それ達成するためになるべく筋肉に負荷のかからない楽な方法でやろうと考えてしまいます。

しかし、私がベンチプレスをやる目的は、目標回数を達成することではなく筋力をアップさせることです。

であれば、楽をして回数を稼ぐのではなく、むしろ回数にはこだわらず敢えて負荷をかけることで筋力をアップさせるべきなのです。

何かを実現するために努力しているのに、いつしか努力すること自体が目的になってしまう。

そんな罠に陥らないためには、自分がやっていることの意味を自分自身に常に問い直してみることです。

もしかすると、毎日の生活でやっていることのかなりの部分は手段が目的化している。そんなことに気がつくかもしれません。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。