黒坂岳央です。
米Appleは2月20日、新モデルのiPhone 16eを発表した。SNSやメディアでは通常の iPhone 16 よりも価格を抑えたモデルとして注目を集めている。
この新モデルの登場により、「iPhone 16、17シリーズの売上と競合しないのか?」というカニバリズムの懸念が生じる。しかし、実際にはiPhone 16eはAppleの販売戦略において明確な役割を持っており、それ故に売上を落とす要因にはならないと筆者は見ている。
PCやスマホはもちろん、あらゆるデバイスをApple製品で統一する筆者のような「アップル信者」が選ぶスマホはiPhone16eではなく、16や17だろう。その理由を、スペックやターゲット層の観点から考察したい。
iPhone16e
Apple公式サイトより
iPhone 16eとiPhone 16のスペック比較
まず、iPhone 16eとiPhone 16の主なスペックの違いを整理する。
【iPhone 16eとiPhone 16のスペック比較】
価格
・iPhone 16e: 約99,800円(税込)
・iPhone 16: 約124,800円(税込)
ディスプレイ
・iPhone 16e: 6.1インチ(ノッチ)
・iPhone 16: 6.1インチ(Dynamic Island)
チップ
・iPhone 16e: A18(4コアGPU)
・iPhone 16: A18(5コアGPU)
カメラ
・iPhone 16e: シングルカメラ(48MP)
・iPhone 16: デュアルカメラ(48MP広角 + 12MP超広角)
MagSafe
・iPhone 16e: 非対応
・iPhone 16: 対応
アクションボタン
・iPhone 16e: あり(制限あり)
・iPhone 16: あり(フル機能)
この表から分かるように、iPhone 16eは「廉価版」として位置づけられながらも、チップセットやメインカメラなどの基本性能はiPhone 16と同等である。その一方で、超広角カメラの非搭載、Dynamic Island非採用、MagSafe非対応など、一部の機能を省略して価格を抑えている事がわかるだろう。
iPhone 16eのターゲット層は異なる
iPhone 16eは、主に 「iPhoneの最新モデルを手頃な価格で手に入れたい層」 に向けた製品である。
ターゲット①:価格重視のユーザー
円安の影響で年々、iPhoneシリーズの価格が上昇する中で、「最新のiPhoneを10万円以内で購入したい」と考えるユーザーは一定数存在する。これまではiPhoneSEがその役割を担ってきた。今回発表されたiPhone 16eはそうした層に最適な選択肢を提供するといえる。
ターゲット②:iPhone SEの後継を求める層
現行のiPhone SE(第3世代)はA15チップを搭載したコンパクトモデルだが、発売日が2022年で随分と時が経過しバッテリーなども劣化している。
iPhone 16eはこれに代わる 最新デザインのエントリーモデルとして、現行でiPhoneSEユーザーからの乗り換え需要を生み出すと推測できる。
その一方で、筆者のように毎年最新のiPhoneを使用するようなユーザーは 「フル機能のiPhoneを求める層」 であり、Pro、Pro Maxモデルを選択し、いち早くAppleの最新技術を活用したいと考える。
実際、筆者は無印モデルとの違いにおいて、USBの転送速度、カメラの数のスペック差だけでPro Maxの購入を決めた。アップル信者にとって「廉価版」より「ハイスペ全部入り」の方がグッと来る要素なのだ。
そのため、両者のターゲットは明確に異なり、カニバリズムは起こりにくいという主張をしたい。
◇
iPhone 16eとiPhone 16は、価格や機能の差別化が明確であり、それぞれ異なるターゲット層に向けた製品である。そのため、 iPhone 16eが登場したからといって、iPhone 16の売上が大きく落ちることはない。むしろ、Appleにとってはより幅広い層のユーザーを取り込めるメリットがあると考える。
■最新刊絶賛発売中!