日本の優良企業はお買い得: トヨタ、三菱UFJ、ソニーに次いで日立が20兆円超え

日立の時価総額が20兆円を超えたと報じられ、そこに日本企業の時価総額上位10社が羅列してあったので思わず、じーっと眺めてしまいました。皆さんは何社、思いつきますか?

小島啓二社長兼CEO 日立製作所HPより

時価総額の多い順にトヨタ、三菱UFJ、ソニー、日立、リクルート、ファーストリテイリング、キーエンス、三井住友FG、任天堂、ソフトバンクグループです。

業種から見ると自動車、一般製造、テック系が4つ、繊維1つを入れて製造業が半分、あとは金融3つ、サービス2社です。時価総額、つまり発行株式数x株価の額でトヨタが突出して約44兆円、三菱UFJ、ソニー、日立が20兆円グループ、リクルートから10位のソフトバンクGまでが15兆円前後グループの3つに分かれます。

では海外との比較です。アメリカ企業の時価総額に当てはめるとトヨタでランクが30位前後でセールスフォースやコカ・コーラと同列になります。20兆円クラスですと80位前後でボーイングとかスタバあたりのランクになります。15兆円クラスだと上位100位に入るかどうか、というレベルです。

アメリカの株はバブルではないか、と称されるのはアメリカ企業へのプレミアムが大きすぎる点でありましょう。例えばテスラの株価収益率(PER)は174倍です。健全なPERが13-15倍程度とされる中でその10倍以上になっている、つまり理論値より10倍以上に株価が買い上げられているのは現在価値よりも将来価値への期待がそうさせるわけです。では日本の上位企業に将来価値のプレミアムはつかないのか、これが今日の最大のテーマであります。

上位10社のうち国際企業はどれでしょうか?答えは全部です。トヨタで85%、三菱UFJで60%、任天堂で80%、リクルートですら55%になっています。つまり少なくとも海外売上比率が大きく、海外市場で知名度や売り上げをあげられる企業が時価総額が大きくなる最低限の条件となります。80年代までなら国内市場だけでも大手を振って自慢できた日本企業がなぜ海外にシフトしなくていけなかったのでしょうか?

もちろん少子高齢化や人口減はあります。30年間もデフレで悩んだこともあるでしょう。ですが、企業目線で見れば需要の取り込みが第一義なのです。つまり日本がだめだから海外に行くではなく、わが社の商品やサービスを欲しいと思う外国人がいるからそこに積極的に売り込みに行く、この前向きの姿勢が業務に反映できたかどうかが決め手だったと思うのです。言い換えると縮む国内市場に対する消極的対策ではなく、海外市場からの引き合いがあるような魅力的なものを売っているということです。

ソフトバンクGは海外での知名度の方がはるかに高くなりました。アメリカの経済ニュースでよく見かける日本企業の報道はまずはソフトバンク。他の会社は何かない限りまず参照にすらされないのです。

株価に将来価値の期待を込めたものだとすれば、日本企業がどれだけの成長プランを描けるか、これがポイントになります。たとえばファーストリテイリング。昨年の8月決算で売上3兆円を超えてきましたが、柳井正氏はもう10数年も前から売り上げ5兆円を目指すと明言していました。3兆円を超えた時点で柳井氏は「年間5千億円ずつ増えれば5兆円は数年先。次の目標は10兆円です」と鼻息が荒いのです。当然ながら売り上げを伸ばすためには投資をし続け、研究開発もし続けなくてはいけません。この不断の努力が企業を大きくするのです。

アメリカの上位企業の時価総額と比べると大いなる違いはありますが、日本企業の実力は海外の同業に比べて劣っているのでしょうか?株式格言に「上がるから買う、買うから上がる」という言葉があります。今のアメリカ株式はアメリカにお金がどんどん入ってきてドルが上がる、だから流入したマネーで株を買うという「入るから買う、買うから入る」の状態にあったと言えます。(私の分析する限り過去形になりつつあります。)

これが逆回転し、為替が150円から120円程度にまで円高になれば為替分だけで2割違うので株価が変動しないとすれば日本の株式の時価総額はドル建てでは2割ほど自動的に上がるのです。

私は日本の優良企業は株価から見ればバーゲンだと思っています。もちろん、先ほどの10大企業全部がバーゲンだとは言いません。ファーストリテイリングのPERは40倍を超えていて日銀のETF処分の議論が夏ぐらいから始まるはずで同社のように日銀が実質主要株主の企業にはボディブローとなる一方、ソフトバンクGが14.4兆円規模の時価総額しかないのはバーゲン状態だと考えています。(ただし、噂されるようにアメリカのテックブームが終わればソフトバンクGは厳しい逆境となります。)

もちろん、この10大企業に限らず日本企業には世界でなくてはならない技術を携えた会社が多く存在します。ただ、あまりにも目立たなすぎる、これが私の感じるところなのです。

最後にあるお話をしましょう。私どもは書籍輸入業をしているので書物が入ったかなり重量がある段ボールが続々届くのですが、その段ボールのクオリティがあまりにもすごいのです。輸入プロセスでも壊れないし、型崩れもしないのです。この段ボール技術は日本ならではです。私どもが卸先に搬入していた時、各所で気がついたことがあるのです。その段ボールを卸先が捨てずにとっていて再利用していたのです。思わず、「その段ボール使っているのですか?」と聞いたところ恥ずかしそうに「いや、これは強くて再利用の価値があってねぇ」と。いっそのこと、段ボールにDeveloped and Made by Japanese technologiesと書いて欲しいぐらいですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月21日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。