ミレイ大統領 同大統領インスタグラムより
ミレイ大統領の登場でアルゼンチンは変身している
米国でトランプ氏が1月に大統領に就任した。彼がラテンアメリカ市場で戦略上の基盤を置こうとしているのがアルゼンチンである。アルゼンチンは100年前は世界で経済大国の一国を占めていた。それが政治指導者の不在、軍事クーデター、高騰インフレなどによる長年の負の影響によって、今ではアルゼンチンは嘗ての大国の姿がなくなっている。
ところが、昨年12月に「変人」として政界に登場したハビエル・ミレイ氏が大統領に就任。彼は1年が経過しない内にアルゼンチンのイメージを一挙に塗りかえた。常に高騰インフレだった国からインフレを大幅に削減させたのである。
その為に彼がやったことは、アルゼンチン政府が長年繰り返して来た財政赤字を補填するのに紙幣を刷るという悪習をやめたことである。
インフレを1年で半分に削減させた
そのことによって、昨年はGDPの5.6%に相当する額の削減をした。昨年のインフレは117.8%に収めることが出来た。2023年のインフレが211.4%であった。よって、1年でインフレを半分に削減させたことになる。
昨年1月は前政権の余波から20.6%を記録し、2月も13.2%と、まだ前政権の余波が続いていた。ところが、5月には4.2%と一挙にインフレ削減の効果が出て来たのである。それ以後もインフレは低い率を維持。11月には2.4%まで下がり、12月は2.7%で幕を閉じた。
インフレが昨年5-6月頃には下降することがなければ、ミレイ大統領への国民からの期待は薄れると言われていた。実際、インフレは推測通り下降している。
今年は1月のインフレは2.7%と発表された。そして予測では5月には1.9%と2%まで下がると見られている。JP Morganは今年のインフレを25%と推測している。即ち、毎月のインフレが2%前後に収まるということなのである。インフレが急激に下降するという現象はアルゼンチンで初めての偉業である。
国民は新しい政治を求めていた
国民はもう長年のマンネリ化した政治に飽きていた。しかも、いつも高騰インフレに悩まされ、一つの製品の価格が今日と明日では異なるという経験が頻繁に繰り替えされて来た。そして、政権はポピュリズムが続き、国民が聞きたいことを発言するが、実際の経済は相変わらず高騰インフレを繰り替えしているだけだった。それに国民はもううんざりしていた。
そこに登場したのがミレイ氏であった。彼は「100年前のアルゼンチンに国家を戻す」と国民に約束。その一方で、徹底した財政支出の削減を断行。その削減には補助金も削減し、それも最低限必要なだけにして、すべて打ち切った。例えば、電気代や水道代などにも補助金を出して、市民の負担を軽減させていた。公務員数も削減を断行した。また、前政府のスピーカー的な役目をしていた従業員700名の新聞社も閉鎖させた。
必要でない規制も撤廃させている。それは現在も続いている。
法定通貨を米ドルにする動きが開始された
ミレイ氏は多くの項目での税金の撤廃を進めて行く予定だ。アルゼンチンは国の経済規模に比べ輸出量が少ない。また規制が多く、外国から投資するにも魅力がない。だからは外貨が常に不足する傾向がある。外国でクレジットカードを使うと、それにも税が課せられる。外貨の流出を防ぐ為である。
ミレイ大統領は市販価格にペソと米ドルを一緒に表示することも今年から許可した。これは将来、アルゼンチンの法定通貨を米ドルに変える意向があるからである。元々、アルゼンチン人は自国通貨ペソへの不信から貯金は米ドルでする傾向にあり、法定通貨の米ドル化ということには抵抗はない。