トランプ氏とゼレンスキー氏の金曜日に行われた会談での大揉めには驚きです。双方のなじり合いでゼレンスキー氏は予定されていた資源権益の合意署名をせず、ホワイトハウスを発ちました。前代未聞です。個人的にはなぜ資源権益の署名だけが先に行われる正当性が薄い中、ゼレンスキー氏はわらをも掴む話だったのでしょう。残念ながらつかみ損ねました。ここから先のシナリオは白紙です。ただアンチトランプの欧州勢は留飲を下げたかもしれません。このところ指摘しているように世の中はより複雑になり、魑魅魍魎の世界です。予断を許さない、本当に最後の最後でどんでん返しがあるのです。東野圭吾の小説の様な話が現実に起きているということでしょう。
では今週のつぶやきをお送りいたします。
おいおい、株価はどこに向かうのだ?
三角持ち合いになると収斂後に株価は上か下に放れやすくなります。今回の日経平均だけを見ると見事に下に放れてしまいました。正直、日本株の実力からすれば解せないのです。ただ、日本株には主体性がないのでまるで主婦が井戸端会議で「トランプさん、どうするのかしら。もう、いやねぇ。私、また損しちゃうわ。」的な立ち位置なのでしょう。なので防戦できないし、そもそも取引額の7割も8割も外国人投資家が占めていれば「あんたの好きにしてよ」であります。月曜日はそこそこ戻すと思いますが。
そういう北米も正直、今、株を買うのは嵐の中で「おらっちの畑、大丈夫か」と見に行くようなもの。まずは3月4日に本当に関税引き上げをするのか見定める必要があります。私の見る限り確率は5分5分。というよりわからない、といったほうが正解です。トランプ氏がゼレンスキー氏を独裁者と呼んだことを昨日記者団に再度問われた際の画像では一瞬、止まり、目が泳ぎ考えた末に「俺、そんなこと言ったか?」。あのシーンを見てこの人は前言撤回は屁とも思わないのだと改めて感じました。
トランプ大統領 ホワイトハウスXより
もう一つはトランプ氏の政権運営能力がどこまであるのかです。私がここに来て感じるのは次々と重要案件に大統領署名をしていますが、いわゆる大統領周辺の幹部はほぼ判断能力を持ち合わせず、事実をトランプ氏に伝えるメッセンジャーになっている点です。こういう政権はほぼ失敗します。よってセンチメンタルになっている株式市場はもう一度、冷静に市場経済の中の株式市場を再評価すべきなのです。今日のPCEも褒められたものじゃないし、来週の雇用統計も悪いでしょう。そうなれば利下げ期待が当然出てくるはずです。昨年ならそこで株価が盛り返すというのがシナリオでしたがね。
イーロンマスクは鬼か?
アメリカ政府の一部の職員にとってマスク氏は鬼と映ってもおかしくないでしょう。FTの記事には「DOGEの米国への攻撃は、歴史的にみて中国の文化大革命以外に比べるものがない」とまで書かれています。ではマスク氏が全面的に責められる立場かといえばこれにはやや思考を要します。なぜ、マスク氏は大ナタを振るわねばならなかったのか、その原点に立ち返る必要もあるのです。そのお題は「政府従業員は甘い汁を吸い過ぎていたのではないか?」。いや、私から見ればアメリカの全ての従業員への警鐘「人の振り見て我が振り直せ」ではないかと感じるのです。
私はコロナ末期からバイデン政権の民主党的、人権主義的、バラマキ的政策から政府が国民にまるでペイチェックのようにお金をばら撒いたあの政策が今でも驚愕の思い出なのです。「カウチに座ってポテチ―食いながらゲームしていてもお金くれるんだぜ。株のデイトレで小銭も稼げる」。もちろん皆が皆とは言いません。ただ、そのような風潮ができたことは事実なのです。そしてコロナが終わったら企業は雇用を急ぎます。猫より働きの悪い新カウチ族を高給で雇っても「この仕事、タルイぜ。俺、辞めるわ」が続出。雇用統計には見えない労働者の出入りに労働の質が落ち続けた、これが実態ではなかったでしょうか?
マスク氏はテスラを立ち上げた際、工場に泊まり込み、友人との楽しい時間を過ごすこともできない中で世の中の期待を良い意味で裏切りました。その点ではマスク氏のメンタルは異様に強いのです。その親分のトランプ氏も不動産事業者としてもディール巧者だったとされます。2人に共通するのは「効率」よく「稼ぐ」です。ある意味、アメリカの政府職員は不幸であったと思います。労働環境の激変がこんな形で現れたのですから。もちろん個々の職員がサボっていたわけではないでしょう。ただ、組織として目を見張る成果がなかった、それに尽きるとすればマスク氏は鬼ですが、アメリカを覚醒させる可能性もあるのかもしれません。
政治がつまらなくなったもう一つの理由
最近政治がらみの報道を見ていて気がついたことがあります。「あれぇ、男ばっかりだ」と。石破政権の閣僚会議の前に閣僚が一堂に座るあの椅子。首相を真ん中に左が総務大臣、右が防衛大臣。センターを含め、肥満気味のおっさん3人か、と思うと日本の政治にジェンダー問題に興味がなくても「いけてない」と思わざるを得ないです。予算をめぐる攻防、ここに出てくるのも与野党含め男ばかり。
第2次石破内閣 首相官邸HPより
女性議員は確かに多くいるのですが、なぜか冴えない、これもまた言えることです。先日の衆議院予算委員会で質問に立った立憲の岡本あき子議員。高額医療費に関する質問のしゃべりかたがヘタ過ぎて何語をしゃべっているのかほぼ意味不明なのですが、事前に配布されている質問票があるおかげで厚労省官僚の答弁はスッキリくっきり。それを報じたテレビは質問の意味を再度わかりやすく解説する始末でした。確かあれはテレ朝だったと思うので立憲に優しい放送局ということにしておきます。
政治家を一旦休止中の蓮舫氏にしろ、一生懸命声を出しているけれど今一つ声が届かない高市氏にしろ、期待された人は裏方に回っています。閣僚でも重要ポストではないところに就いた三原じゅん子氏と阿部俊子氏は一般庶民には声も顔もリーチしていません。政治がつまらない=華がないというのは言い過ぎかもしれませんが、他の国の政権は女性が相当前面に出てきています。トランプ政権の大統領報道官は27歳のお姉さまです。日本の官房長官なんて女性向きだと思うのですがね。日本はジャンプできないのですよね。
後記
多分世の中の規制やルールが増え過ぎたことはほぼ全ての人にも影響しているでしょう。私はカナダで事細かくルールが設定され、厳しいライアビリティ(法的責任)を背景にしたビジネス環境で生きてきていますが、20年前のやり方から2倍以上の作業量に増えています。自分の背負っている事業量は分かっているのになぜこんなに忙しいのかふと立ち止まって考えてみればコトを進めるためのやり取りの量がかつての何倍にも膨れ上がっています。まるで仕事の長距離マラソンです。これが当たり前の時代だというなら仕事の出来高が下がっていることになり、DOGEのマスク氏からすれば「お前もクビ」と言われるかもしれません。大変な世の中です。AIとは関係のない次元ですよね。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年3月1日の記事より転載させていただきました。