お金持ちに気持ちよく納税してもらう方法を考える

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個人の確定申告の季節がやってきました。毎年この時期は顧問税理士とのやり取りに忙殺されます。かつてに比べればずいぶん平準化されているとはいえ、日本の所得税の累進課税は相変わらず残されたままです。

最近では「年収1億円の壁」という議論もなされ、高額所得者の実質的な税率が低いことが問題になっています。

しかし、商売の世界ではたくさん買ってくれる人に対してはボリュームディスカウントをするのが当たり前です。人よりも頑張って働いて高い収入を得ている人が、より高い比率の税金を払わなければいけないというのは、なんだか理不尽です。

税率をフラットにしろとは言いませんが、せめてたくさん税金を払う人に気持ちよく納税してもらえる工夫してはどうでしょうか?

例えば、私が子供の頃には、いわゆる長者番付というものがありました。これは国税庁が所得税額1000万円を超える納税者の名簿を高額納税者として発表するもので、職業ごとにランキングがニュースになっていたのを覚えています。

個人情報保護や犯罪防止を理由に、この公示制度は2004年を最後になくなってしまいました。

しかし、高額納税者の中には、名前を公表されても問題ない。むしろ名前を公表してほしいと思っている人もいるはずです。

たくさんの納税をすることで、国の財政健全化に貢献したということで、財務大臣が感謝状や表彰状を作って発表するのはどうでしょうか。あるいは、高額納税者には表彰制度を設けたり、記念品やメダルを授与しても良いでしょう。

お金持ちにとって、最大の満足は自己承認欲求が満たされることです。目立たず表に出たくない人は今のままでも良いと思いますが、出たがりのお金持ちには、それを満たしてあげることで、少しは気持ちよく納税してもらえると思います。

お金持ちが納税額を競うようになれば、自己承認欲求のためにつまらない節税は止めて、せっせと納税をする人もきっと出てくるでしょう。

お金持ちを目の敵にして、税金をたくさん取ってやろうという姿勢は彼らの反感を買い、納税のインセンティブを弱めることになります。

高額納税者がリスペクトされる社会になれば、そうなりたいと思う人が増え、税収にもプラスの影響が出るのではないかと思います。

お金持ちが目立たないように隠れてコソコソと暮らさなければいけない社会になれば、居心地の悪いお金持ちが逃げていきます。それは日本にとっては大きな損失です。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年3月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。