ゾーンに入る?

先日ある人に、「ゾーンに入る」ということに関し尋ねられました。ネット検索してみますと、『「ゾーン状態」に入るには? コツを理解してハイパフォーマーになろう』(20年11月06日マイナビニュース)といった類の記事が数多見られます。

私自身、ゾーンに入っていると感じられたことは殆どありません。私には、何を以てゾーンに入ると言うのか今一つ良く分かりませんが、ゾーンに入るとは、物事に徹底して集中し目的に向かい他事を一切考えることなく動いて行っている状況、を表現しているのではないかと思います。従って迷いなどあれば集中出来ませんから、その時はゾーンに入れないということでしょう。要は、ゾーンに入ろうとして常に入れるわけでもなく、集中力の極致において自然体の中でゾーンに入るといった状況があり得るのだと思います。

集中してやるということは、如何なる事柄においても非常に大事です。日本が誇るべき偉大な哲学者であり、教育者である森信三先生の大阪天王寺師範学校本科での講義を纏めた『修身教授録』にも第26講に「仕事の処理」がありますが、仕事の仕方として最悪なのはダラダラやることで、終始先後の判断を行い集中すれば一気呵成にやろうという形に基本なってきます。

人間誰しもずっと集中し続けることは容易くありませんから一つに、何事につけ期限がある方が集中力を高めるために良いと思います。期限を設けない場合ダラダラになってしまうのは、人間である以上仕方がない部分もあります。「原稿を何時何時までに書かないといけない」とか「何時何時までに之をやり遂げねばならない」といった期限に向かって、今自分が出来るベストな所に挑戦すべく一心不乱に打ち込む中で、集中力の極致に達するタイミングも生じてくることでしょう。その時ふっと閃きが生まれてくるかもしれません。

では集中力持続の方法があるのかと言えば、それは方法云々でなく言わば三昧の境地に入るようなことだと思います。「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」(『論語』雍也第六の二十)――三昧の境地に入り朝から晩まで寝食忘れ徹底した姿勢を崩さないようにしなければ、長時間に亘る集中というのは極めて難しいことでしょう。

人間嫌な事柄をこなして行く必要に迫られることも日常茶飯事にあります。だから、やるべきをきちっとやるために「何時までに」といった期限を設け、それに合わせて自分の集中力を極致に近付けるよう努力して行くということだと思います。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2025年3月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。