「安くて良いもの」ではなく「高くて良いもの」を作るべき

安くて美味しいラーメンを提供し続けたいと値上げを我慢して営業してきたラーメン店が経営が成り立たなくなり閉店したというニュースを聞きました。

ラーメン店に限らず原材料費や光熱費の高騰、更に人手不足や後継者の不在で廃業する飲食店が増えています。

利益を削って赤字になっても値上げしないで常連客に愛されるお店をメディアは美談のように取り上げますが、何だか違和感を感じてしまいます。顧客のためという理由で値上げしないで、経営破たんするのは本末転倒です。

そもそも飲食店は営利企業ですから、その目標は顧客に支持される事業からきちんと利益を得て、株主、従業員、経営者、そして社会に配分することです。

競合との競争の中で生き残る戦略は、価格競争か商品差別化かの2択です。

ただし、価格競争はレッドオーシャンの泥沼です。大手企業と競争しても勝てませんから、避けるべき戦略です。

目指すべきは商品の徹底した差別化で、高価格でも受け入れられるように努力することです。

差別化によってもコスト以上の価格設定が出来ず、長期的に利益が出せない会社は、顧客から価格に見合った価値を認められていないことを意味します。事業の社会における存在意義について考え直すべきだと思っています。

実際ラーメン店にも高価格にも関わらず人気がある繁盛店はたくさんあります。企業として目指すべきは、高くても顧客が価値を認めてその価格を受け入れてくれる高くても良いものを生み出すことです。

良いものを安く提供するという過剰な職人気質によってお店を閉店に追い込みサービス提供できなくなるのなら、正当な価格で利益を出して生き残って欲しい。これが本当のお店のファンの願いではないでしょうか。

「安くて良いもの」を作る飲食店に外国人観光客が押し寄せるようになれば、日本人が安い労働コストによって外国人に経済的に搾取されていると見ることもできます。職人気質の人には誇りを持って「高くて良いもの」を提供して欲しいと心から思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年3月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。