大谷選手になれないのと同じようにウォーレン・バフェット氏にもなれない

日本経済新聞の報道によれば、アメリカの著名投資家ウォーレン・バフェット氏が2025年末で現役を引退することを表明しました(図表も同紙から)。

1965年にバークシャーハサウェイという紡績会社の経営権を握り、投資会社に業態転換して投資によって企業価値の拡大を続け、60年間で企業価値を6万倍以上にまで成長させました。

アメリカの株式インデックスであるS&P500と比較すれば、いかに卓越した運用成績であったかがわかります。偉大なところは、時代に応じて巧みに投資戦略を変更し、企業価値の拡大を続けることに成功したことです。

ウォーレン・バフェット氏の業績から個人投資家が学ぶべき事は2つあると思います。

1つは長期投資の重要性です。

株式投資は長期的には経済成長による企業価値の増大からの恩恵を受けてリターンをもたらす。だから短期の変動に惑わされることなく資産を投資し続けることが大切です。

実際にウォーレン・バフェット氏は「10年間株式市場が閉鎖されていても安心して保有できる銘柄に投資している」とも語っています。

そして、もう1つはアクティブ運用の難しさです。

ウォーレン・バフェット氏を真似た投資手法を採用する株式投資家もいますが、似たようなことはできても同じことを再現するのは極めてハードルが高いと思います。

PashaIgnatov/iStock

例えて言えば、大谷翔平選手の真似をしてもメジャーリーガーになれないのと同じです。再現性のない方法はいくら研究して真似ようとしても同じレベルに到達することはできません。

実際、ウォーレン・バフェット氏も個人投資家にとって最も優れた投資方法として、アメリカの株式インデックスであるS&P500に連動するインデックスファンドを購入することを勧めています。

自分自身の投資成果に関しては例外であり、真似すべきではないと説いているのです。

また、ウォーレン・バフェット氏も常にインデックスを上回る投資パフォーマンスを実現していたわけではありません。

以前のブログに書きましたが、2020年までの10年間は運用に苦戦しインデックスを下回る投資成果であった時期も存在します。

とは言えこれだけの長期間にわたり、これだけの圧倒的リターンを出し続け、これだけ個人投資家に愛された投資家が再び現れる事は無さそうです。

ハンバーガーとコカコーラが大好きというウォーレン・バフェット氏。引退後は静かに楽しく充実した人生を送ってほしいと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年5月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。