今年のゴールデンウィークは大分県を旅しました。由布院から列車に乗ってやってきたのは別府。言わずと知れた日本を代表する温泉地です。
別府駅前で万歳している方は油屋熊八さん。愛媛県出身の実業家で別府で亀の井ホテルや亀の井バスなどの観光業を興した実業家です。別府の名を全国的に有名にしたのは彼が私財を投じて宣伝したからで、彼なしには今の別府の観光地としての地位はなかったといいます。
ちなみに熊八のマントには地獄めぐりの小鬼が一匹しがみついています。
駅前には足湯ならぬ「手湯」があって旅行者の手を温めてくれます。寒い冬にはありがたい存在です。
駅から少し歩いてレトロな外湯にやってきました。こちらは竹瓦温泉。明治時代に建てられた際に竹製の屋根の建物であったことからこの名がつきました。現在の建物は昭和13年の建築。築85年ほどの唐破風造の建物です。温泉もさることながら建物自体のレトロさが目を惹き、海外観光客がどっと押し寄せています。
内湯と砂湯があるのですがどちらも半地下部分にあります。内湯が低い場所にあるのは建築当時はポンプの性能が低く、高い場所にお湯を送ることができなかったためです。なお、お湯はかなり熱め。石鹸などもないので注意が必要です。
竹で編んだ照明がよき。
はい!はい!
竹瓦温泉は開湯時から地域のシンボル的存在であり、建て替え後は建物を見に来る観光客もいて大いににぎわいました。
温泉の目の前には竹瓦小路と呼ばれる飲食店街があり、レトロな雰囲気を醸し出しています。かつてこのすぐ近くにあった別府港に大阪などから船でやってきた観光客が濡れずに竹瓦温泉に行けるよう、屋根付きの商店街が造られたのが竹瓦小路の始まりです。日本最古の木造アーケードとして日本産業遺産に認定されています。
竹瓦温泉から北に歩き、別府温泉エリアに進みます。温泉街を見下ろすように建つのが別府タワー。昭和32年に建てられた日本で3番目のテレビ塔です。塔の高さは100メートルで、通天閣より少し低いくらい。別府のランドマーク的存在となっています。ここから別府の町が一望できるというので登ってみます。
別府タワーから南、大分方面に向かう国道10号を望みます。別府一の目抜き通りです。この左手に宿泊施設が並びます。
東側に見えるのが「ラクテンチ」。戦前からある遊園地で現在も営業を続けています。ここに至るラクテンチケーブルカーは非鉄道業者が営む鉄道として鉄道マニアの中でも有名です。一回乗ってみたいんですが基本ぼっち旅なので遊園地に行くのは勇気がいります。
望遠レンズで南を見れば、大分市内のコンビナートに明かりがともりだしているのがわかります。
そして別府港からはちょうど大阪に向かうフェリーが出発したところでした。九州から関西へは新門司港からも神戸、大阪に阪九フェリーが出ており、船でゆっくり一夜を過ごすという旅の選択肢があります。
ぐるっと別府タワーの展望台を一周したあと眼下に広がる温泉旅館に向かいました。昭和時代に建ったものが多く正直古さは目立ちますが、かえってそれが懐かしさを醸し出してくれていい雰囲気を出してくれています。
というわけで、今夜はここでお休みします。また明日~
おはようございまーす!
朝から別府駅でバスに乗り、鉄輪(かんなわ)までやってきました。
ここは側溝など至る所から湯気が出ていて、いかにも温泉地という雰囲気を醸し出してくれます。ここは野菜などを蒸して食べることができる炊事場。こちらも別府名物なんですがあいにく朝早すぎて営業時間外でした。
やってきたのは「蒸し湯」。こちらも煙突から湯気が立ち上っています。こちらでは洞窟の中に蓬(よもぎ)の一種である薬草が敷かれていてそこに横たわり、サウナのような蒸し風呂の中で8分から10分、蒸されていい汗をかきます。このところ仕事ではストレスでいやな汗をかき続けてきたので、久しぶりにデトックスしました。
風呂上がりに温泉で蒸された半熟卵をいただきました。殻に塩がついていたのでむくときに手に塩がつき、その塩が卵についていい味を出してくれました。
さて、鉄輪温泉といえば「地獄めぐり」が有名です。ここでは多くの池に地底から温泉が湧き出ていますが、その場所ごとに異なる地質のため池の色が変わります。その池を「地獄」と見立て、観光施設化したもので現在は7つの「地獄」がこの周辺に点在しています。今回訪ねたのは「鬼山地獄」。
その名の通り鬼がいました。
この日は雨で少し気温が低かったからか湯気多め。池の水面がやや見えにくかったのが残念でした。
が、鬼山地獄のメインスポットは池だけではありません。この建物を抜けると日本で初めて飼育に成功したある生き物が大量に飼われているのです。
それがワニ。鬼山地獄は別名ワニ地獄とも呼ばれています。大正12年に温泉の熱を利用して飼育を開始、現在は70匹ほどのワニがいます。ぐるっと回りましたがまったく動きません。餌付けの体験ができるそうですが、このときはきっと修羅場の様相なんでしょうね…。
もうひとつ、「海地獄」にも行ってみました。
温泉中の成分である硫酸鉄が溶解し、海のようなコバルトブルーの湖面となります。大正9年に昭和天皇(当時は皇太子)がこの地を訪問、国の名勝に指定されています。
海地獄の中にはこのような赤い池もあります。こちらは酸化鉄、酸化マグネシウムが含まれ赤くなった泥が熱水とともに噴出したもの。ほんの少し離れただけなのに噴き出す場所によってこれだけ池の色が変わる。本当に不思議です。
海地獄の施設内には「地獄」の歴史を知ることができる「ギャラリー青」があります。今は多くの観光客の目を楽しませてくれる「地獄」ですが、かつてはこの温泉の湯によって作物が育たなくなる厄介者とされていました。田畑から突然温泉が湧き出て作物が全滅してしまうこともあったそうで、この地に住む農民にとってはまさに「地獄」であったといいます。ここではそんな「地獄」の負の歴史も教えてくれます。
日本を代表する温泉地、別府。一泊したことでその魅力をたっぷりと楽しむことができました。別府駅周辺や鉄輪だけではなく、別府にはこのほかにも多くの温泉地があり、ラクテンチなどの歴史ある観光施設もあります。次はまだ訪ねたことのない別府に足を踏み入れ、新しい別府を知りに行きたいと思いました。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年5月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。