コロンビアのペトロ大統領
EL PAÍS
大統領が麻薬中毒者であるのは公然の秘密
南米コロンビアでは長らく右派政権が続いてきたが、汚職の蔓延や経済の停滞を背景に、2022年に初の左派系大統領が誕生した。グスタボ・ペトロ氏である。彼はかつてゲリラ組織「M19」の戦闘員であったが、同組織はすでに解散している。
そのペトロ大統領に対し、麻薬中毒の疑いがかけられている。この疑惑はもはや「公然の秘密」となっており、コカイン生産大国のひとつであるコロンビアの大統領が薬物と関係を持っていたとしても不思議ではない、という見方すら存在する。
問題はその「依存度」である。政権運営に支障をきたすレベルであれば深刻であり、実際にその兆候が表面化しつつある。
ペトロが麻薬中毒者であることを暴露した一通の手紙
この疑惑を公に問題視したのが、ペトロ政権で外務大臣を務めたアルバロ・レイバ氏である。最近、同氏はペトロ大統領に宛てた公開書簡の中で、大統領が麻薬中毒であることを指摘。医師による診断を受け、政権運営に支障がないか調査すべきだと要請した。
その書簡では、2023年6月22〜23日にパリで開催された「新グローバル協定サミット」にも言及。サミット終了後、大統領はすぐに帰国する予定だったが、実際には25日まで帰国が遅れたという。このため、同行したジャーナリストたちは在仏コロンビア大使館の協力で急きょ宿泊先を探さざるを得ない状況となった。
この間、ペトロ大統領の所在は不明となり、フランスの情報機関ですら把握できなかったとされる。大統領は2日後にようやく姿を現した。
レイバ氏は書簡の中で、「国家は誰の手に委ねられているのか」「実際に政権を動かしているのは誰なのか」と問いかけ、国家の統治機能と社会の安定に警鐘を鳴らしている。
大統領の公式行事への欠席が目立つ
下院議員のクリスチアン・ガルセス氏は、法廷が任命した医師による診断を通じて、大統領に政権運営能力があるかどうかを明確にすべきだと主張している。背景には、大統領が出席すべき公務に欠席するケースが目立ってきた現状がある。
さらに、上院ではペトロ氏が大統領職を継続するにはふさわしくないとして、職務停止を求める声も上がっている。
決定的な証言としては、大統領府の首席顧問だったアルマンド・ベネデッティ氏が「大統領はコカイン問題を抱えていた」と発言したことが挙げられる。この発言が正式に問題視されなかったのは、上院議長のイサン・ナメ氏が審議にかけることを拒否したためだとされている。
ペトロ政権を巡るさらなる疑惑
著名ジャーナリストのマリア・ヒメネス・ドゥラン氏は、情報筋からの証言として、ペトロ大統領が薬物依存により公の場から姿を消すことが増え、欠席期間も長くなっていると述べている。この問題が国際問題へと発展する可能性も指摘されている。
これらの批判に対し、ペトロ大統領は「私は中毒者ではない。せいぜいコーヒーの中毒者だ」と否定している。
しかし、さらに大統領を窮地に追いやっているのが、2023年に明らかとなった長男ニコラス・ペトロ氏による証言である。彼は、大統領選挙の資金の一部が麻薬組織から提供されたことを認め、自身がその資金の大半を着服していたことを告白した。
加えて、ペトロ大統領自身が過去に「コカインの合法化」に言及していたこともあり、麻薬組織との関係が深いとの疑念は払拭されていない。