男性の幸せな人生は何で決まるのか?

黒坂岳央です。

それなりに人生を生きていると「幸せな人生の形」にも男女差が現れるという本質が見えてくる。

当然、性差より個人差の方が圧倒的に強いファクターであることは認めつつもざっくり大枠として「男性の幸せな人生は何で決まるのか?」はある程度言語化できると思っている。個人的にこのテーマを考察したい。

※当然だが、本稿で取り上げる内容に当てはまらない人が不幸だなどと短絡的な結論を取り上げているつもりはない。また、個人差や多様性への挑戦をするつもりはなく、一般論と傾向を分析する目的で書かれた。

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社会に必要とされている実感

男性は「自分が役立っている」という外的評価に幸福が直結しやすい。自分は男性だが、これは自身の感覚やこれまで関わってきた周囲の人間の言動を観察結果とも一致する。

これは歴史的な行動様式からも示すことが可能だ。太古の昔から、男性は狩猟や防衛、外部との交渉など、わかりやすい結果や他者貢献が強く求められてきた。

こうした歴史的な役割がDNAの奥底まで「成果で価値を測る価値観」で自己肯定をする傾向を刻みこんだと考えられる。ハーバード成人発達研究でも、仕事・地域活動など「社会的達成感」を得た男性ほど主観的幸福度が高かったと報告されている。

筆者自身も強くこの感覚を持っている。最近は「仕事なんてしょせんお金を稼ぐ手段」と言われる事が多いが、自分一人だけ得をして関わる相手が損をするような仕事なら、たとえ報酬をもらってもやりたいとは思えない。

まず顧客や取引先が目に見えて価値を感じてくれ、その結果報酬を頂くという流れを組むものでなければ、自分の仕事の価値を信じられず仮に報酬が高くても続けたいとは思わない。

このように男性は社会貢献をすることで幸福を引き出しやすい。そのため、「社会や組織の一員として役に立っていると実感できる仕事。並びに「自分の能力との適合性」を考えて仕事を選ぶといい。

家族を幸せにする責任感

家族の幸せを願うのは当然、女性においても全く同じなのだが、女性は「家族みんなが幸せに」と考える一方で、男性の場合は「自分の手で愛する家族を幸せにしてみせる」という傾向が顕著だ。

男性は友人ネットワークが狭く、深い情緒的つながりを配偶者に集中させやすい。ゆえに「妻や子の幸福=自分の幸福」という式が女性より強く働く。ハーバード大学の研究でも、「パートナーとの関係性が男性の幸福と健康を決定づける」と発表されている。

それ故にパートナーや子供たちの幸せのためなら、積極的な自己犠牲を厭わないという感覚を持っている男性は自分を含めて少なくないだろう。筆者もいざとなれば家族を守るために、自分の命を使うことには一切の躊躇がない。

近年の脳科学では性差より個人差が大きいと再検証が進んでいるも、あくまで一般的傾向として女性が共感優位であるのに対して、男性は問題解決優位の脳の違いがあると言われている。男性にとっては自分の人生が「意味ある」と思えるときにこそ、深い幸福感を得やすいということだ。

そのため、結婚や恋人についていえば、「幸せにしてもらいたいと考えるより、幸せにしたい」と「与える側に立つ」と考える傾向が強いのだ。出会いは「一生尽くしたくなるような相手」を見つけることが幸福を左右するファクターとなり得る。

与えられた能力を活かしきる

よく「人生は配られたカードで戦うゲーム」という言い方がある通り、誰しも強み弱みがあって、それを上手に遊ぶのが人生である。

できるだけ弱みが出ないように抑える工夫を行い、逆に強みを有効活用しやすい仕事につくことが重要だろう。

この根拠の一つにマズローの自己実現欲求がある。自己実現欲求とは、承認欲求や社会的つながりを乗り越えて最も高次な欲求段階のことである。仕事や資産の成果自慢をしているようではまだ下位の段階に過ぎず、最終的に自分の能力をフル活用する人生に幸福の種子がある。

歴史的な偉人や著名人の中には、ビジネスや芸術の分野で成功を収めた人が晩年には自分の能力をフル活用して研究や知的活動に没頭する様子が描かれている。

人生後半に大仕事をした人物、たとえば日本全国を歩いた伊能忠敬あげられる。55歳で引退後17年をかけて日本地図を完成させた彼は仕事でお金稼ぎのため、というより引退後の自己実現欲求の一環として成し遂げた快挙と言っていいだろう。

社会・家族・能力の輪が重なる場所に、男性は最も深い幸福を感じやすい。必ずしも、3つすべてを実現させる必要はなくどれか1つでもいい。男性はこれらの実現に人生を使うことが、幸せを掴みやすいといって差し支えないだろう。

 

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