持つのか、石破政権:参院選の結果を受けて辞任せざるを得ない余力のなさ

「持つのか、石破政権」と題したものの個人的には参議院選の結果を受けて辞任せざるを得ないところまで追い込まれるとみています。とすればあと2か月かもしれません。決めつけるわけにはいきませんが、さまざまな不満が噴出し、外交もほとんどできない余力のなさを感じます。キャラ的にも石破氏は首相向きではないということでしょう。「日本の首相は1年交代」というのは派閥のドンの持ち回りという趣旨もあったのに派閥がほとんどなくなった今でもジンクスに近いものが復活するのでしょうか?逆に言えば、日本の首相職はそれぐらい多忙、ストレスフル、多方面からの圧力続きの上、体調不良で休むことすらできない激務で、それに耐えられる適任者はそういるものでもないと言えそうです。

石破首相 首相官邸HPより

海外と比較しても日本の首相が国会に出席する日数は突出しているとされます。様々な調査があるので何が正しいのかわかりませんが、一例として2013年に鈴木貴子議員が国会に提出した質問状には日本の首相の国会出席日数が127日、英国36日、フランス12日、ドイツ11日しかないとされることをどう認識しているか、と聞いています。これに対して安倍晋三氏の答弁は「他国と単純に比較できないが、わが国では相当の時間を国会で費やしていると認識している」と答えています。

首相といえども24時間しかない中で政権の責任者兼政党政治における与党の代表者としての業務があり、かつ年中開催される様々な式典、皇室関係の行事、更には外国からの来賓、そして自ら外国に外交に行くのです。その間、様々な突発的事故や事件が起きるわけで考えただけでぞっとするほどの業務があると言えます。

そうなると必然的に官僚に頼るしかないのです。以前、官僚に頼らない政治を掲げた首相として鳩山氏がいましたが、うまくいきませんでした。一方、官僚に頼りっきりの首相というのも情けないもので国会答弁は答弁書を棒読みになったりします。それだったらメールでやり取りすればよいではないか、と私は思うのです。あらかじめ質問はわかっていて回答は読むだけなら私だってできます。

結局、国会答弁書も官僚の腕1つにかかっているわけですが、官僚が必ずしもシャープかどうかはこれまた別だと思います。「官僚たちの夏」という城山三郎氏の小説はその時代のビジネスマンには必読でありました。佐橋滋 通産事務次官をモデルにした作品でそれは熱く日本の産業を真剣に考え、官僚のモデルともいえる存在だったでしょう。ですが、今や海外に行きたくない外交官とか、以前、靴が汚れるとおんぶさせた官僚もいましたが、官僚のレベルも下がってきている可能性もある中で官僚作成の答弁書を鵜呑みにせざるを得ない多忙な首相というのも責められない気もするのです。

今回、石破首相が苦しい弁明を余儀なくさせられているのが年金改革法案。これは石破氏にとっては運悪く、5年に一度の公的年金の財政検証が2024年にありました。その中で「2057年に基礎年金部分が今より3割下がる」という報告された対応が今回の年金改革法案なのですが、個人的には与党、野党とも主張の論点がずれている気がします。アンコのアンないのではなく、議員の案がないのではないか、という気がします。この問題を小手先の補充的な措置でやり過ごすべきではないのです。かなりグローバルな観点から国民の最低限度の生活水準を維持するための方策を考えるべきで、そんな年金の金額がいくらというレベルの話ではないのです。

ということはアップアップの石破氏には石破氏が持てる能力を発揮する余力はなく、厚労省が作る答弁書をそのまま読み返さざるを得ないわけです。

そこにもってきて江藤拓氏ののけぞるような発言にかばい切れなくなったのもまた事実。世間は「私はこれで大臣を辞めました、by 軽口」でひと月もすれば忘れ去られるかもしれませんが、米の価格が全然下がらない=消えた備蓄米はどこに、はその原因を見つけ出すべきでしょう。それこそ、先日自宅のコメにGPSを入れたら近所の学校の先輩が盗んでいたという事件がありましたが、いっそうのこと、備蓄米にもGPSを入れたらよいではないですか?

備蓄米が放出される前に「コメの収穫は報じられているほどなかったのでは?」という推論は成り立ちにくくなりました。小泉氏の手腕に期待したいところではありますが果たしてどうでしょうか?

石破首相が突っかかっている問題は消費税の財務省、年金の厚労省、コメの農水省でどれも各省庁の立場が強く押し出され、政府がそれを突破できる力がないともいえます。ここにいずれ判明するアメリカとの関税交渉が思惑通りに行かなければ全滅に近い状態と言えます。

参議院選に向けて石破政権への逆風はより厳しいものになる中、自民党の反石破派=主流派は放置プレーの状態を続けるとみています。仮に石破氏が降りた場合、誰が首相になるのか想像しにくいですが、仮に与野党が混戦状態にあり、政権が混とんとするなら経験者の岸田氏が順当だと思います。高市氏に人気があるのは十分承知していますが、今、保守本流が主導できる体制が自民にも世論にもないと思います。世論の敵は中国ではなく、財務省など省庁なのです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年5月22日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。