ここバンクーバーには北米で最大級のインド系コミュニティがあります。この30数年の私の経験だけの話をすれば90年代のバンクーバーのインド系の職業といえばタクシーの運転手とスーパーのレジ打ちの人が非常に多かったのが印象的でした。理由の一つは当時まだ現金主義の時代の中、インド人は小銭勘定で間違えないから、というものでした。(白人は驚くほど暗算が出来ず、釣銭計算が出来ないのです。)
インド式計算法というのがあり、インドの学校では掛け算は1-19までやるとされます。日本は1-9ですよね。マトリックスにすると日本は81通りですが、インドは361通りになります。なるほど、そうだとすれば数字に強いのは確かかも知れません。
インドの経済発展といえばアメリカを中心にインドにコールセンターの設立の動きができ、更にハイテックの施設をインドに投資する動きが活発化します。インド人は理数系に強みがあり、優秀であるというのが世界で初めて紹介されたわけです。
私がインド系を強く意識したのは私が開発した最後の高層住宅のペントハウスをインド人の歯科医が購入されたことです。その上、私のところの駐車場を今でも5台も借りてくれており、毎年クリスマスの時に高級な洋酒をくださるのです。そんなことしなくてもよいといつも申し上げるのですが、「ひろさんには世話になっている」といつも平身低頭でお礼をされるのです。極めてマイルドで紳士的なご夫婦です。
現在運営しているマリーナでもインド系顧客は増えてきており、金払いも中国人よりはるかに良いというのが私の印象です。バンクーバーは人口の2-3割ぐらいが中国系と言われるほど中国系の文化が浸透していますが、彼らの懐具合が急速に締まったのは誰でも気が付くところです。まさに5年間ぐらいバブルを享受し、その「宴のあと」には安い店に集まる中国人の姿が目立ち、「奥様のベントレー」も最近はほとんど見かけなくなりました。(日本のバブル前後もそうだったわけですが。)
その隙間を縫って目立つのがカナダにおけるインド系の人のビジネス進出です。この10数年、前述のタクシーやスーパーのレジ打ちから運送業、特にトラックドライバーが増え、建設業でもインド系を見かけない現場はほぼないと言い切ってよいと思います。5年ぐらい前はインド系の建設会社にやらせると何を作るかわからないと言われたのですが、そのイメージは大きく変わろうとしています。
先日電話工事を担当したのはインド系、私のフィットネスのインストラクターもインド系、私の会社の保険会社の担当もインド系、私の担当の専門医もインド系、寿司屋で器用に箸を使って食事しているのは中国系からインド系に変わりつつある…こんな変化を確実に感じ取っています。
もともとカナダに移住できるインド系はインド国内でもそれなりのステータスの方だと理解しています。ということは優秀なインド系が国内外で経済をけん引し、富の分配が進みつつあるのでしょう。もちろん、それが日本のように「一億総中流」的な形にならないのは分かっていますが、ここバンクーバーに限れば確実に中国人のビジネスを侵食しつつあります。
以前にも書きましたが、インド系にも様々な人種がいるのですが、中心となるアーリア人は紀元前1500年頃にインドに侵攻し、インドヨーロッパ語族としてインドに定着した人が多く人種的にはインド人は欧州人に近いものがあります。地政学的にはアジアの一部になっていますが、感性的には中東にも共通するものがあり、向く方向は欧州なのかなと感じるわけです。
GDPで見ると23年が9.2%、24年が6.4%(推定)、25年見込みが6.7%のようです。昔の日本や中国のように製造業が大きく伸びる時代ではないので人口が多いメリットである人口ボーナスが以前ほどではないと予想しています。同じことは中国の都市部と農村部の経済的格差で既にみたわけでインドも別の意味での格差社会がいずれ到来すると思いますが当面は中進国に向けて中国を凌駕する成長率と国民の自信、更には世界からの直接、間接投資で立ち位置が大きく変貌していくとみています。そして思想やブラッドがより欧州人に近いことで「アジア人」というとっつきにくさがない点で欧米におけるインド系の人は有利に見えます。

トランプ大統領とモディ首相 同首相インスタグラムより
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年5月29日の記事より転載させていただきました。