固定資本減耗の国際比較:金融保険業

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この記事では、金融保険業の固定資本減耗について国際比較してみます。

1. 金融保険業の固定資本減耗

経済活動別の固定資本減耗について国際比較を試みます。

今回は、情報通信業と共に生産性の高い産業としても知られる金融保険業について注目してみます。

図1 経済活動別 労働者1人あたり固定資本減耗 日本
OECD Data Explorerより

図1が日本の労働者1人あたり固定資本減耗の推移です。

今回着目する金融保険業(橙)は、産業の中では中程度の水準ですが、卸売・小売業や建設業などを上回ります。

建物以外にも、ATMなどキャッシュレス化・情報化に合わせた投資が必要な産業ということかもしれませんね。

2. 労働者1人あたりの推移

金融保険業の固定資本減耗について労働者1人あたりの水準(名目、為替レート換算値)の推移を見てみましょう。

図2 労働者1人あたり 固定資本減耗 金融保険業
OECD Data Explorerより

図2が主要先進国の金融保険業における、労働者1人あたり固定資本減耗の推移です。

日本はフランスやイギリスと同程度で推移していましたが、2000年代からはフランスと、2010年代からはイギリスとの差が拡がっています。

アメリカが圧倒的ですが、フランスもかなり高い水準に達しているのも特徴的ですね。

3. 労働者1人あたりの国際比較

最新の2022年の水準について国際比較してみましょう。

図3 労働者1人あたり固定資本減耗 金融保険業 2022年
OECD Data Explorerより

図3がOECD各国の2022年の国際比較です。

日本は12,610ドルでOECD30か国中21位、G7中6位です。

先進国の中では低い水準となるようです。

アメリカが非常に高い水準に達していますが、ベルギー、デンマークはさらに上回ります。

4. 対国内総生産比の推移

続いて、各経済活動における国内総生産(Value added, gross)に対する比率でも比較してみましょう。

図4 固定資本減耗 対国内総生産比 金融保険業
OECD Data Explorerより

図4が金融保険業における固定資本減耗 対国内総生産比の推移です。

近年のフランスの上昇具合が印象的です。

日本は主要先進国の中ではやや低い水準から、上昇傾向が続く事で中程度となっています。

5. 対国内総生産比の国際比較

最後に、対国内総生産比の国際比較をしてみましょう。

図5 固定資本減耗 対国内総生産比 金融保険業 2022年
OECD Data Explorerより

図5が2022年の固定資本減耗 対国内総生産比の国際比較です。

フランスが23.3%で先進国トップというのが特徴的です。

日本は10.4%でOECD30か国中14位、G7中4となっていて、先進国では中程度となります。

6. 金融保険業の固定資本減耗の特徴

今回は経済活動のうち金融保険業の固定資本減耗について着目してみました。

金融保険業では、ATM以外にも、窓口業務なども少しずつ無人化が進むと見られますね。

AI技術が進めば、融資の査定なども無人化・自動化が進むかもしれません。

人が介在するサービスが減少していくのか、新たに人にしかできない金融サービスが生まれてくるのか大変興味深い分野の1つではないでしょうか。

統計データからもそのような変化を垣間見ることができるかもしれません。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2025年6月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。