100年安心?5年ごとに壊れる年金制度への疑問 --- 岡辺 秀幸

「100年安心」っていうフレーズ、覚えてますか?

2004年に政府が年金改革をしたときに掲げたキャッチコピーです。

その時分からでしたら、私も独身時代から結婚した今になって、「食べ物にお金を使わなくなった」「着るものにお金を使わなくなった」「エポスカードみたいなクレジットカードだってもう10年は使っていない」という生活の変化がありましたので、経済感覚の移り変わりがよく分かります。

外では何でもないふりをしていても、スーパーで値札を見つめて立ち尽くす自分が、ふと「誰のために頑張っているのだろう」と思ってしまうことがあります。欲しいものではなく、「買えるもの」しか見ない毎日。季節が変わっても、服を選ぶ楽しさもなくなりました。

昔は、月に一度くらいはカフェでひとり時間を楽しんでいたのに、いまではそのワンコインさえ「余計な出費」と感じるようになってしまいました。収入を得る手段をひとつしか持っていないことの怖さが、今後ますます響いてくることでしょう。

家族からも親類からも、よい話は聞こえてきません。どこを見渡してみても「これからの不安」ばかりです。食卓の話題も、楽しいことより「どうやって節約するか」の話ばかり。笑う余裕も、ちょっとしたケンカをする元気さえも減ってきたように思います。

稼ぎを家に入れないといけない、私たちみたいな立場の者がいちばん肩身が狭いです。「子どもに何かあったとき、助けられるだろうか」と思うたび、漠然とした不安が体の奥からじわじわ広がります。未来を考えること自体が、怖くなってきました。

今の若い世代にとって、年金制度って“安心”どころか、むしろ「また制度変わったの?」「払う金額ばっかり増えて、将来もらえるのは減らされるかも…」っていう不安の象徴になっています。正直、安心とは真逆の存在です。

今回の年金法改正も、まさにそんな「信頼できない制度」を象徴するようなものでした。自民党・公明党・立憲民主党の三党が、国民にほとんど説明しないまま、密室で合意して、わずか4日で衆議院を通過させてしまった。

特にびっくりしたのが、「基礎年金の底上げ」が急に盛り込まれたこと。内容の良し悪し以前に、「なんでこういう大事な話が、ちゃんと議論されずに決まるの?」って思いました。

私たち若者からしたら、こんな“見えない政治”が続く限り、年金制度を信じろっていうほうが無理です。だってサラリーマンなんて、毎月の給料から強制的に保険料を引かれてるんですよ? それなのに、何に使われてるかよくわからないし、将来自分たちがちゃんと受け取れるかも怪しい。

制度を支える側なのに、制度から置いてけぼりにされてる。これって本当にフェアなんでしょうか?

それに、財源の問題も気になります。今の制度を維持するには137兆円もかかるって言われてます。でも、そのお金をどう確保するのかは曖昧なまま。現役世代の負担をさらに増やすのか? 消費税を上げるのか? 他の社会保障を削るのか?

そしてもう一つ、大事なことを言わせてください。この年金制度が、「若者の未来を奪っている」ってことです。

高い保険料を払わされながら、将来の見通しは不透明。自分の人生設計すら立てづらくなっているんです。

結婚、出産、マイホーム…将来に関する大きな決断をしようと思っても、「どうせ年金も当てにならないし」とか「老後が不安だから今は貯めなきゃ」って、挑戦する勇気を削られていく。

これはもう、単なる制度の問題じゃありません。若者が「どう生きていくか」に直接影響を与えてる深刻な問題です。

じゃあ、どうすればいいのか。

若い世代の声がちゃんと政策に反映される仕組みをつくるべきです。

今の政治は、高齢者の組織票や既得権が強すぎて、若者の意見はほとんど通っていません。でも、このままだと、若者の不満は永遠に解消されないと思います。

たとえば、「世代別の審議会」をつくって、世代ごとの意見や利害をオープンにぶつけ合って公的空間に「見える化」して残せるようにするとか。そういう新しい仕組みが必要だと思います。

私たち若者は、「年金制度を支えるために生きている」わけじゃありません。

「若者が希望を持って生きていける社会をつくるために、制度があるべき」なんです。

この順番を間違えたら、どんな制度も機能しなくなります。本当に安心できる社会って、「変わらない制度」があることじゃなくて、「変わっても納得できるルールや手続き」があることじゃないでしょうか。

それがなければ、私たちはこの制度に未来を預けるなんて、とてもできません。

岡辺 秀幸
自営業。


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