嫌われる勇気が文章を変える

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文章に限らず、言葉は自信を持って伝えることが大切です。そのためには、適切な場面で「断定して言い切る」ことも必要です。言葉にする際には、読者に価値を提供したいと思うものですが、その価値を明確に伝えるには、曖昧さを排除する勇気が必要です。

ただし、断定的な表現は諸刃の剣です。説得力を高める一方で、使い方を誤れば信頼を失うこともあります。重要なのは、目的と文脈に応じて表現を使い分けることです。

次の文を比較してみましょう。

  1. 東大に合格したいなら、この参考書はいいかもしれません。
  2. 東大に合格したいなら、この参考書にすべきです!

1の文章は、自信のなさが透けて見えます。読者は「本当に効果があるのか」と疑問を持つでしょう。一方、2の文章は明確な根拠とともに断定しているため、説得力があります。単なる押し付けではなく、確信を持った提案として受け取られやすくなります。

経営の場面でも考えてみましょう。

  1. 来期の経営計画は課題を精査し熟慮したうえで策定します。
  2. 来期の経営計画はこの方向でやります!予想ROIは150%です。

あなたが経営者なら、どちらのアプローチに期待を持てるでしょうか? 1は慎重ですが、具体性に欠けます。2は明確なビジョンと根拠を示しており、実行への意欲が感じられます。

なぜ多くの人は「断定して言い切る」ことができないのでしょうか。それは批判を恐れるからです。しかし、批判を恐れて曖昧な表現に逃げることは、かえって読者を失望させます。自分の意思を持たない書き方は、文章を読みにくくするだけでなく、読者の時間を無駄にします。

断定的な表現を効果的に使うためのポイントです。

1. 根拠を明確にする
断定する際は、必ずその理由や根拠を示しましょう。「〜すべきだ」と言うなら、なぜそうすべきなのかを説明する責任があります。

2. 読者の利益を考える
断定的な表現は、読者のためのものでなければなりません。自己満足のための断定ではなく、読者が行動を起こすための明確な指針となるべきです。

3. 責任を持つ
断定したことには責任が伴います。その覚悟があってこそ、読者は信頼してくれます。

4. 状況に応じて使い分ける
すべてを断定的に書く必要はありません。確実なことは断定し、不確実なことは正直に伝える。この使い分けが信頼を生みます。

確かに、断定することで反発する人も出てくるでしょう。しかし、それ以上に、明確なメッセージに共感し、行動を起こしてくれる人が増えます。中途半端な表現で全員に好かれようとするよりも、確信を持った言葉で本当に必要としている人に届けるほうが、結果的に大きな価値を生み出します。

文章を書く際は、腹をくくることが必要です。すべての人に受け入れられることを目指すのではなく、伝えたいメッセージを必要としている人に、確実に届けることを目指しましょう。それが、書き手としての責任であり、読者への誠実さでもあります。

ただし、これは無責任な断定を推奨するものではありません。十分な調査、思考、経験に基づいた確信があってこそ、断定的な表現は力を持ちます。批判を恐れずに断定することと、批判に値する無責任な断定をすることは、まったく別のものです。

最後に、文章の目的を忘れないでください。文章は、読者に価値を提供し、行動を促すためのものです。曖昧な表現では、読者は何をすればいいかわかりません。明確で断定的なメッセージこそが、読者の人生や仕事に実際の変化をもたらすのです。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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