正直申し上げると石破首相がかわいそうに感じています。辛辣な評価も多く、政権運営は本心ではない方向に進みます。国会で玉木氏とのやり取りの際にキレてしまい、侮辱は止めてほしいと真顔で怒る様子には余力がない状態を感じてしまいます。
政治家に対しては常に賛成派と反対派がいるわけで批判や反対意見はあることが当たり前です。ではそんな政治家がなぜそれでも声高に胸を張って政治ができるのかといえば支援者の熱いエールがあるからでしょう。安倍氏などはその典型で好きな人は好き、嫌いな人は徹底的に嫌いと分かれていましたが、信念を貫き、功績を積み上げたからこそ長く政権を担うことができたとも言えましょう。
私の最大の不思議はそんな石破氏の支持率がなぜさほど下がらないのか、であります。産経/FNNのこの週末の世論調査によると石破氏の支持率は5月に比べ5.3ポイント上昇の38.2%。ただこのひと月の間、石破氏に何か功績があったわけではなく、明らかに小泉劇場効果だったと断言してよいと思います。
それだって私は必ずしも石破氏の再評価という前向きな意味ではなく、江藤氏を自身が任命し、失敗した対策の揺り戻しと見たほうが良いわけで石破氏が得点を挙げたとは考えていません。
そんな中で首相は2040年に名目GDP1000兆円を目指すと改めて表明しました。もともと24年6月の政府の骨太方針に謳われているものです。ただ現在600兆円。今から15年でGDP66%増を目指すとする意味が私にはよくわからないのであります。
私は批評するつもりはないのですが、GDPはあくまでも国内の経済を指し示すわけで海外でいくら稼いでもそれはカウントされません。人口は現在ざっくり1億2300万人、当てにならない国立社会保障人口問題研究所の計算で2040年は1億1100万人、つまり今後15年で人口は1200万人、比率にして9.8%減となります。実際には人口の加速度的減少が起きているので個人的には10%を優に超える人口減になるとみています。その中でGDP66%増を目指す意味も現実性も私には理解できないのです。ならば欧州の一部の国家のように一人当たりGDPの尺度の方がはるかに理にかなっていると思います。
石破首相はいまや官僚や一部の取り巻きの言いなりになりがちで自分で物事を考え、判断する余力があまりなく、故に国会答弁も迫力がないものになってしまいがちです。なぜそうかといえば取り巻きの支援体制が十分ではなく、自民党の党内力学でも全面的な協力を得られる状況にないことがあるでしょう。
ここに来て経済対策としておひとり様2万円、お子様には更に2万円、住民税を払っていなければ更に2万円を配る物価高対策は石破氏の「本意ではなく、やりたくないけれど、渋々やむを得ず、苦渋の選択でそうせざるを得なかった」わけです。これが本当に自民党が選挙を勝ち抜くための方策だったのか、私には失望なのであります。賢くないです。
前述の世論調査でも自民党支持層で46.5%、全体では65.7%が現金給付を「評価せず」の意見です。評価しない人の声を代弁すると「一時の小遣い」より恒常的な対策が欲しいのです。物価高なのでこのお金、使って補充してください、というより国民は電気代やガス代、ガソリン補助のほうが「助かるわー」ですし、小泉氏のコメ対策が高評価なのも国民は日々の物価と背中合わせだからなのです。庶民はスーパーの価格を5円10円単位で見ており、価格上昇幅以上に心理的インパクトがあるのです。私が時折日本に行き、スーパーで物価チェックを兼ねて買い物をしますが、もやし、卵、コメの値段はわかりやすいのです。石破首相はこういう国民の感性を理解する姿勢を持っているはずなのに政権運営のしがらみで自分の信念の50%も実行できていないようにお見受けします。
いかなる理由にせよ能力や実力を発揮できないならそれは政権遂行能力がないと判断せざるを得ないのです。仮に内閣解散もなく、参議院選も結果として与党安定になった時が私は一番怖いのです。石破氏の背中を押すタイミングは果たしてあるのでしょうか?日本がこれ以上、お休みしている余裕はないと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年6月17日の記事より転載させていただきました。