日本の銀行に預金を置いておく「リスク」

新しく購入したフィリピンのプレビルド不動産物件の購入資金をいつものようにネットバンキングから海外送金しようとしたところ、ルール変更で不動産購入資金はネットバンキングからは送金できないと拒絶されました。

コールセンターに連絡をしたところ、電話で本人確認を行い送金手続きをしてもらえましたが、細かい確認作業が続き結局取引が終わるまでに30分近い時間がかかってしまいました。ネットバンキングなら数分ですから、かなり面倒です。

マネーロンダリングや不正資金の送金などをチェックするのは目的のようですが、なぜ不動産投資資金をネットバンキングで送金するのがダメなのかよくわかりません。

資金使途を明確にする必要があるのであれば、不動産の売買契約書や支払いスケジュール表等を提出すれば済む話です。

今回の不動産購入は60回で分割払いなので、これから毎月電話をかけて手続きをしなければなりません。オペレーターからは毎回同じ手続きをする必要があると、当たり前のように言われてしまいかなり憂鬱です。

このような煩雑な手続きは海外送金に限りません。

国内でもまとまった資金を第三者に振り込み手続きしようとすると振り込みの目的を聞かれます。こちらも、マネーロンダリングなどの犯罪防止が目的と思われます。

しかし、送金先の銀行口座も先方の銀行で口座開設の際不正な口座でないことをチェックをされているはずで、送金することには問題はないはずです。

国内の振り込み手続きの場合、1日の上限金額や1ヵ月の上限金額が決められており、それを超える金額は勝手にすることができません。

自分の口座に入っている自分の資金なのに、利用できる金額を銀行が決めているのは何だか不思議なことです。

現在のような平時であっても、銀行預金の残高には様々な制約がかかっています。

今後、もし有事になった場合、銀行が自分の口座に対してどのような制約をかけてくるのか。考えてみると少し怖くなってきました。

銀行預金は自分のお金だけれども、自分で自由に引き出しできなくなる可能性があるということです。銀行預金の流動性リスクです。

預金保険で1000万円とその利息まで保障され安心と思われている国内の銀行預金ですが、別の「リスク」を考えておいた方が良いかもしれません。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年6月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。