国家公務員、特に「キャリア官僚」と呼ばれる総合職への学生の人気が年々低下しています。現在の採用試験制度が導入されてから約10年で、申込者数は27%も減少し、2024年度は1万8333人にとどまりました。
今年度春の採用試験では合格者数が1793人と、前年より160人少なくなり、試験倍率も過去最低の6.7倍を記録しています。さらに、2023年度には採用から10年未満で退職した職員が203人に上り、これは現行制度下で最多となっています。
人事院HPより
こうした傾向の背景には、待遇や働き方に対する不満があります。学生たちは国家公務員よりも、やりがいやスキルアップの機会に恵まれていると感じる民間企業に魅力を感じているのです。特に東大生の間では、かつて憧れの職業だった国家公務員よりも、外資系コンサルティング会社などを選ぶ傾向が強まっています。
また、官僚が国会対応で長時間拘束されることや、野党議員によるパワハラの問題も広く知られるようになり、霞が関の職場環境に対するネガティブな印象が広がっています。SNS上では官僚に対する批判や中傷も見られ、公務員としてのブランドイメージは大きく傷ついています。官僚を避けるようになっている状況は、政府にとっても深刻な課題です。
政治主導が定着したことで、かつては政策形成の中心だった官僚も、現在はその役割が制限されており、若手職員は日常業務の多くを事務的な雑務に費やしているようです。
こうした中で、人事院は国家公務員の魅力向上に向けた対策を急いでいます。給与面では、2024年度に月給を平均2.76%(約1万1183円)引き上げ、大卒初任給もこれまでより2万9000円以上高い23万円に改定しましたが蟷螂の斧感はぬぐえません。「結局はお金の問題なのではないか」という意見もあります。
また、人事院は若手職員を中心とした「魅力発信チーム」を今夏にも設置し、各府省が連携して公務員の魅力をホームページやSNSなどで積極的に発信する方針です。
出身大学別の合格者数をみると、最も多いのは東京大学の171人ですが、これは前年から18人減少し、過去最少の人数です。次いで京都大学が112人、北海道大学と早稲田大学が76人ずつ、東北大学が72人と続いています。
このままでは、優秀な人材が官僚を目指さなくなり、ひいては日本の統治能力そのものが損なわれるおそれがあります。官僚をもう少し大事にしないと日本自体がダークサイドに転落するかもしれません。