黒坂岳央です。
「一生懸命頑張ります!」という言葉をよく聞く。だが、本当に一生懸命やり続ける人はあまり見たことがない。人間は一瞬だけやる気を見せることは簡単だが、長期に渡ってフルコミットすることができるのは人を選ぶ。
一方で、口だけでなく本当に本気を出す人もいる。口だけやる気の人と、本気の人は何が違うのか?
結論を言えば本気の人は「リスクを取っている」のだ。
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他人のお金は大事にできない
痛みを伴わなければ人は本気になれない。そして他人のお金は大事にできない。
それは人のお金、つまり税金を使う政治家を見ればわかる。彼らの中には、公費を無駄遣いしたり、私的な目的に流用したりする人が後を絶たない。なぜか?それは自分のお金ではないからだ。失うリスクがないとき、人は真剣にその価値を考えることを怠る。
同じことは会社員にも当てはまる。会社のお金で研修を受けるとき、参加者の何人が本気で取り組むだろうか?「タダだから」と受け身で参加し、得た知識を活かそうとしない人も多い。自分の財布からお金を出していないから、リスクがない。結果、本気になれないのだ。
筆者は会社員だった頃、会社がお金を払って研修やビジネス書購入支援、英会話レッスン支援などの福利厚生を受けたことがある。だが、研修に出てみれば「堂々と業務をサボれるから」と雑談や内職ばかりで本気の人はいなかったし、ビジネス書もネットフリマで小遣い稼ぎにしたり、英会話レッスンもすぐやめてしまう人も多かった。
例外はあるが…
もちろん、リスクを取ることだけが正義とは思わないし、リスクに足元を救われるケースも有る。
加えてどんな世界にも例外は存在する。世の中には徹底して利他的行動を取ることがまわりまわって自分が富むことにつながる、という本質を理解している人は金銭的、信用リスクなくコミットメントできる。
たとえば政治家の中には人生をかけて国家を豊かにすることを考える人もいるし、もうお金を稼ぐ意味がないほど稼いでいても社会を良くするために命をかけて頑張る起業家もいる。
だが、これらは例外であり、「他人事」で本気になることは難しい。結局、身銭を切って痛みを伴わなければ、大多数は心から本気になどなれない。これはその人がダメというより、人間はそういう生き物だと思った方が自然な発想だ。
えらそうな事は言わない。自分自身も同じである。だから挑戦する時はまずはしっかり身銭を切ってダメージを負うところを取り組みの起点としている。
リスクを取る人は強い
一方でリスクを取る人間は強い。
例えば、起業家だ。彼らは非常に高いリスクを取っている。自分の貯金を投じ、基本的には会社員という強力な社会インフラとのトレードオフだ。会社員をやめてしまえば、もう戻る場所はない。失敗すれば失うのはお金、時間、キャリアであり、全身全霊で成功をかけて挑む。挫折するという発想はない。
投資家もまた、自分の資金を市場に投じることで真剣に分析し、戦略を練る。リスクがあるからこそ、本気になれるのだ。
もちろん、会社員の中にもリスクを取る人は本気な人がいる。世の中は相対比較と競争の原理で動いている。仕事を「自分ごと」と捉えて、本気でキャリアを追いかけている人は「とにかく目先の仕事で結果を出すこと」にフルコミットしているので、間違いなく本気でやっている。
たとえば数年間、自分のキャリアにならないプロジェクトなどに配属されれば、彼らは時間の無駄を嫌ってキャリアアップに直結する仕事を求めて転職する。
世の中はドンドン競争的になっていく。労働人口が減少する我が国においても、特定の職業では人余りで競争しているし、外国人労働者とも競合する。今後はAIだろう。
そうなれば本気の人同士が競う世界で、リスクを取らずに片手間で取り組む人は勝ち目がない。競争の中で生き残るには、リスクを取って本気になるしかない。
◇
リスクを取れない人は本気の人に勝ち目がない。やる気は出せても本気を出せないからだ。だが、世の中は厳しい。投資の格言でもあるがリスクを取れる人はリスクを取れない人から富を得ている。これはビジネスでも人生でもまったく同じ構図である。本気を出したければ、まず痛みを伴うリスクを取ることだ。
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