総務省が発表した5月の消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除く総合で3.7%の上昇となり、物価上昇が一段と加速しています。食料品やエネルギーの価格高騰が続き、コメ類は前年比で101.7%も上昇しました。チョコレートやコーヒー豆なども2〜3割の値上げとなっており、家計への圧迫感は一層強まっています。
仮に今後インフレ率が鈍化しても、物価が上がり続ける限り生活はどんどん苦しくなります。
こうした状況にもかかわらず、日本銀行は依然として「基調的な物価上昇は限定的」との見解を崩していません。17日の金融政策決定会合では、2026年4月以降の長期国債の買い入れを、3カ月ごとに4千億円から2千億円ずつの減額に変更すると決めました。金利の急上昇による市場の混乱を避けるためです。あわせて、景気への悪影響を避けるため、政策金利(0.5%程度)も据え置くことにしました。
しかし、既に物価上昇率は2%の目標を大きく超え、半年以上にわたって3%台の高水準が続いているにもかかわらず、金融政策の正常化は極めて鈍いままです。
本来であれば、物価がここまで上昇し、実質賃金が3年連続でマイナスとなっている現状は、金融緩和の転換を検討すべき重大なシグナルです。ところが日銀は、長期金利を抑え込み、円安を容認するような姿勢を続けています。その結果、輸入物価が高止まりし、生活必需品の価格は今後も上がり続ける懸念があります。
海外であれば「不快なほど高い」と表現される水準のインフレにも関わらず、日銀がほぼ静観を続けるのは、政治的な意図か、もしくは金融市場への過度な依存に陥っている証左ではないでしょうか。
物価だけが上がり、賃金が追いつかない「貧しいインフレ」が進む中で、日銀の判断は極めて重いものなっています。
植田和男日銀総裁 日銀HPより