野党の要求する消費減税やガソリン減税の財源として法人税の増税が検討されているという。これは世界の流れに逆行するものだ。法人税(法人所得税)は間違った税であり、むしろ下げるべきだ。最終的には、廃止することが望ましい。
法人所得税は間違った税である
トランプ米大統領は6月20日、国際的な法人最低税率協定は「アメリカでは効力を持たない」と宣言し、バイデン政権が約140カ国と交渉して2021年に締結した、最低税率を15%とする租税カルテルから離脱した。
FOX NEWS
これはそれほど予想外の政策ではない。彼の1期目にも共和党は、法人税を20%に下げて国境調整税(連邦消費税)を創設する税制改革を提案したが、民主党の反対で葬られ、トランプは減税だけをつまみ食いした。
今度は連邦消費税の代わりに、関税で税収をおぎなうつもりらしい。それは無理だが、トランプ関税をやめて法人税(法人所得税)をゼロにすればアメリカは世界最大のタックスヘイブンになり、トランプの望むように投資が世界から集中して税収は増えるだろう。
法人所得税は間違った税である。それは支払い利息を経費として控除する一方、株主への配当には課税する二重課税であり、企業は株式より借り入れで資金を調達するバイアスをもつ。
グローバル企業が登記上の本社を任意の国に設置できる世界では、それはタックスヘイブンによる租税回避を促進し、税負担を不公平にする。本社は電子的に移動できるので、それを物理的に規制することはほとんど意味をもたない。
消費税を「法人売上税」に
消費税は企業の付加価値に課税する「第二法人税」だが、誤ったネーミングのために消費者がすべて負担すると誤解され、減税ポピュリズムの原因になっている。
消費税の名前を法人売上税(あるいは単に売上税)と改めれば、消費税を極度にきらう大衆のバイアスも避けられる。日本も法人所得税率をゼロにし、法人売上税(消費税)を欧州なみの20%に上げてはどうだろうか。
これで法人税収14.6兆円は失われるが、消費税収が25兆円増える。ネットで約10兆円の増税だが、この差額は(たとえば)国民年金保険料を廃止する財源にあてる。税収中立にするなら、法人売上税率は16%でよい。
これはそれほど奇抜な提案ではなく、第1次トランプ政権で国境調整税(DBCFT)として提案され、クルーグマンからフェルドシュタインまで、ほとんどの経済学者が賛成した。それに従って日本の法人税改革案を考えると、次のようになる。
- 法人の営業キャッシュフローに課税する
- 減価償却を廃止し、投資はすべて経費として控除する
- 税額はすべて最終財の売上げに転嫁できる
- 消費地で課税し、海外の利益には課税しない
- 金利にも配当にも課税する
税制改革で日本経済は活性化する
日本経済の停滞している大きな原因は産業空洞化である。日本の法人税率は図のようにアジアで最高なので、製造業は海外に生産拠点を移し、連結経常利益は増えたが、賃金は下がった。
JETROより
法人売上税になると、海外生産で税を逃れることはできなくなる。製品を輸入して販売したら、消費地の国内で課税されるからだ。課税対象をキャッシュフローに統一し、金利にも配当にも課税すると、銀行貸し出しは減るが、株式投資は促進される。
投資のキャッシュフローは一挙に生じるが、減価償却はそれを期間配分して課税するので、企業の税引き利益を大きく左右する。税務当局の裁量も大きく、租税特別措置のほとんどは償却を大きく認めて税額を減らすものだが、このような抜け穴もなくなる。
もし日本の法人所得税がゼロになると、世界中のグローバル企業の本社が集まるだろう。OECDは反対するだろうが、トランプ政権のように租税カルテルから脱退すればいい。