たとえ後輩であっても「さん付け」する理由

私は年齢性別に関係なく誰に対しても基本的に「さん付け」て呼ぶようにしています。親しみを込めてファーストネームやニックネームで読んだり「ちゃん付け」にする場合もありますが、極めて例外的です。

日本では未だに年功序列を意識する人が多く、年齢を聞いた途端にタメ口になるような人がいたりします。銀行で仕事をしている人は未だに「あいつは何年入行」と会社に入った年次を重視します。

生まれた年次で上下関係を決めることには何の意味もありません。

確かに、人生経験が長いことから得られることに大きな価値があるのは事実です。特にインターネットが普及していなかった時代は、知識や情報は自分で経験するか本を読むぐらいしか方法がありませんでした。長く生きた人の方が、圧倒的に多くの情報を持っていたのです。

しかし、ネットの普及で情報収集のコストと手間は劇的に低下しました。人生を長く生きてきた経験からのアドバンテージが消えてしまったのです。

むしろシニアになれば年下の人たちに教えを乞うことが増えてくると思います。

例えばSNSのアプリの使い方や動画の編集といったネットの新しい知識は若い世代の方が吸収力があって、20代の若者に聞いた方が詳しく知っていたりします。

自然年齢に関係なく、能力や知識のある人には尊敬の気持ちを示し、素直に教えを乞うた方が良いのです。

年上だからさん付け、年下だから呼び捨てと言った、自然年齢で上下関係を決める古い価値観は早く捨てるべきです。

自分の子供のような世代の若者に対しても「〇〇さん、わからないから教えてもらえますか」と躊躇なく頭を下げる。その方が人生は豊かになり、人間関係も好転します。

年齢の上下にこだわって変なプライドを持っているシニアの人を見ると何だかとても恰好悪いと思ってしまうのです。

これは年齢に限った話ではありません。コンビニのレジのスタッフを怒鳴りつけたり、タクシーの運転手さんに横柄な態度を取ったりする人も、相手との上下関係を考えて、相手によっては急に上から目線で態度を変える人たちです。

それとは逆に、どんな状況でも誰に対しても分け隔てなく同じ対応を取ることができる人は、誰に対してもリスペクトと感謝の気持ちを忘れない人です。

「弱い犬ほど良く吠える」と言います。偉そうにふるまっている人ほど、その肝っ玉は小さく「小物ぶり」を感じて残念な気持ちになってしまうのです。

私がたとえ後輩であっても「さん付け」するのは、自分の格好の悪い「小物ぶり」を見破られたくないからです(笑)。

davidf/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年7月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。