トランプ減税法案成立で「米国の黄金時代が来る」のか:財政悪化の懸念も高まる

トランプ大統領は4日、法人・所得税の恒久的な引き下げを含む大型の減税・歳出法「OBBB法(One Big Beautiful Bill)」に署名し、同法が成立しました。

これは2017年に第1次トランプ政権下で実現した「トランプ減税」を恒久化するもので、経済成長の加速を掲げたトランプ大統領は「米国の黄金時代が来る」と演説しました。

OBBB法の成立を喜ぶトランプ大統領 ホワイトハウスXより

トランプ減税の主な内容は以下の通りです。

  • 法人税率の引き下げ:従来35%だった連邦法人税率を21%に大幅に引き下げ、企業の競争力を高める。

  • 所得税の最高税率の引き下げ:39.6%から37%に引き下げられ、富裕層を中心に負担が軽減する。

  • 相続税・贈与税の基礎控除拡大:控除額を倍増し、資産の移転をしやすくする。

  • 海外子会社からの配当課税の廃止:多国籍企業が米国外にためていた利益を国内に戻しやすくする。

  • クリーンエネルギー政策からの転換:バイデン政権が推進してきたクリーン・エネルギーへの投資促進政策を修正。
  • チップ収入の非課税化:一部のサービス業労働者の負担軽減を狙った措置ですが、所得税をそもそも納めていない層には恩恵が届かないとの指摘もあり。

こうした減税の恒久化は、今後10年間で3.8兆ドル(約550兆円)の財政悪化要因とされ、併せて歳出削減策も講じられました。特に、低所得者向けの公的医療保険「メディケイド」やEV補助金などが削減され、1000万人以上が医療保険を失う可能性もあると報じられています。

このため、「富裕層減税」や「低所得層への冷遇」との批判も強く、格差拡大を懸念する声が高まっています。

その一方で、法案の成立により2025年末に予定されていた減税措置の失効が回避され、政府債務の法定上限も5兆ドル引き上げられたことで、当面の財政・市場リスクはひとまず和らぎました。

債務上限問題は回避できましたが、債務の持続可能性問題は回避できるのでしょうか。

こうした動きに対して、起業家のイーロン・マスク氏は、新党「アメリカ党」構想を表明し、財政支出の拡大に反対する姿勢を強めています。共和・民主両党の勢力が拮抗する中、マスク氏は数議席を狙って議会のキャスティングボートを握る戦略を掲げていますが、米国の二大政党制の中で第三極がどれだけ影響力を持てるかは今後の注目点です。