厚生労働省が発表した2025年5月の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は前年同月比で2.9%減少し、5カ月連続のマイナスとなりました。
名目賃金(現金給与総額)は1.0%増の30万141円で41カ月連続のプラスでしたが、消費者物価の上昇(4.0%)に追いつかず、購買力は低下しています。特に賞与が18.7%減ったことが響き、企業が先行き不透明な中でボーナスを絞り始めているとみられます。
基本給にあたる所定内給与は2.1%増え、春季労使交渉の高水準の賃上げを反映していますが、それでも物価上昇には追いつかず、実質ベースでの生活水準は下がり続けています。米や外食の価格上昇など、生活必需品を中心としたインフレが家計を直撃しています。
こうした中で、政府の対策が給付金頼みであることに対し、「的外れだ」との批判が広がっています。
名目賃金が増えても、実質的には手取りの価値が減っており、現場の生活感覚と乖離しています。また、政府が社会保険料の減税や抜本的な構造改革を避け、「賃上げは企業任せ」にしていることへの不満も高まっています。
アベノミクスは本来、実質賃金を抑えて雇用を確保することを目的としていましたが、現在のような供給制約型インフレ下では逆に生活を圧迫する結果となっています。
今回の統計は、単なる数字の変動以上に、経済政策の限界と国民の不満を浮き彫りにする結果となっています。
首相官邸HPより