参政党が政権をとったならば(AIによる分析)

参政党が注目を集めています。都議選で躍進した勢いに乗り、参院選でも大きく議席を伸ばすことが、各種の調査で予測されています。ただ、政党の中身としては、懸念される部分もあるのではないでしょうか。

私は、少し前に参政党の憲法草案を見て驚きました。「国家主権」なるものがうたわれていたからです。世界の憲法を見ても、国家に主権があるという考え方を採用しているものは見当たりません。近いものとしては、戦前の大日本帝国憲法に対する美濃部達吉の「天皇機関説」が挙げられるかもしれません。

ほかにも、日本人の要件として、両親のどちらかが日本人であることを条件としています。たとえばイスラエルでは、母親がユダヤ人であることを要件としていますが、ユダヤ教への改宗者も含まれます。

このような特異な憲法草案を掲げる政党が政権をとったら、いったいどうなるのでしょうか。そこで、AIにその可能性を分析してもらいました。

ここでは、参政党が掲げる主要な政策分野ごとに、どのような社会が想定されているのかを、「目指す社会像」と「考えられる課題・懸念」に分けて検討していきます。

参政党の基本理念

まず、全ての政策の根底にあるのは「日本の国体を守り、大和心を取り戻す」という思想です。

これは、グローバル資本主義や外国の影響から日本の主権と伝統、共同体を守り、食や健康、教育における自立を目指すという考え方です。この理念が、具体的な政策に色濃く反映されます。

分野別の変化予測

1. 食と健康・医療

【目指す社会像】

  • 食料自給率の向上と食の安全:
    • 国内の農家、特に有機・無農薬農業を強力に支援し、食料自給率100%を目指します。
    • 遺伝子組み換え作物やゲノム編集食品、海外からの農薬・化学肥料・添加物に対して厳しい規制が敷かれます。
    • 学校給食は、国産・無添加の食材が基本となります。国民は「安全な食」を享受でき、国内の農業が活性化するとされます。
  • 医療・健康観の変化:
    • 西洋医学中心の医療から、東洋医学や伝統医療、栄養療法などを統合した「国民の健康を守る新しい医療」への転換を目指します。
    • WHO(世界保健機関)など国際機関からの影響を精査し、独自のワクチン政策や医薬品の承認プロセスを導入する可能性があります。
    • 「自分の健康は自分で守る」という意識が奨励され、病気の根本原因としての食や生活習慣の改善が重視されます。

【考えられる課題・懸念】

  • 食料価格の高騰や品不足、食の選択肢の減少。
  • 科学的根拠に基づかない医療(疑似科学など)が公的に推奨され、標準医療が軽視されるリスク。
  • 国際的な医療協力や感染症対策からの孤立。
2. 経済・財政

【目指す社会像】

  • グローバル経済からの脱却と国内産業の保護:
    • 「グローバル企業」や「外資」への富の集中を是正し、国内の中小企業や地域経済を最優先に保護します。
    • 消費税の減税または廃止、および新たな金融・財政政策(例:政府による通貨発行益の活用など、MMT理論に近い考え方)の導入で、国民の可処分所得を増やし、内需を拡大させます。
    • 海外への過度な投資やODA(政府開発援助)は見直され、国益に資する分野に集中されます。

【考えられる課題・懸念】

  • 保護主義的な政策による国際社会との貿易摩擦。
  • 財政規律の喪失によるハイパーインフレーションや国債の信用失墜のリスク。
  • 外資の撤退による株価の下落や技術革新の停滞。
3. 教育

【目指す社会像】

  • 日本の伝統と国柄を尊ぶ教育:
    • 日本の神話や歴史、皇室の伝統を重視する教育内容に大きく転換されます。「自虐史観」を排し、自国に誇りを持てるような教科書が採用されるでしょう。
    • 道徳教育が強化され、家庭や地域社会との連携を通じて、子供たちの人間性を育むことが目指されます。
    • グローバル教育よりも、まず日本のことを深く学ぶ「国柄教育」が優先されます。

【考えられる課題・懸念】

  • 特定の歴史観や価値観が強く押し出され、教育の多様性や中立性が損なわれる可能性。
  • 近隣諸国との歴史認識を巡る対立が先鋭化する恐れ。
  • 国際的な視野を持つ人材の育成が遅れる可能性。
4. 外交・安全保障

【目指す社会像】

  • 真の主権国家としての自立:
    • 「自分の国は自分で守る」という理念に基づき、憲法改正(特に9条)を本格的に目指し、自衛隊の役割を明確化します。
    • 他国(特に米国)の意向に左右されない、国益を最優先した独自の外交を展開します。
    • 国連などの国際機関に対しても、その中立性や有効性を厳しく問い、是々非々の立場で関与します。

【考えられる課題・懸念】

  • 日米安全保障条約などの既存の同盟関係が揺らぎ、東アジア地域の軍事的緊張が高まるリスク。
  • 外交的な孤立を招き、国益を損なう可能性。
  • 防衛費の大幅な増額による、他の国家予算(福祉、教育など)への圧迫。

日常生活への影響(まとめ)

参政党が政権を担った場合、私たちの日常生活は以下のように変わるかもしれません。

  • 買い物:スーパーには国産、特に有機栽培の野菜や加工品が並びますが、価格は現在より高くなる可能性があります。海外の安価な食品や輸入品の種類は減るかもしれません。
  • 医療:風邪をひいたら、漢方薬や栄養指導がまず選択肢になるかもしれません。ワクチン接種は任意性がより強調され、様々な情報が提供されるようになります。
  • 子育て・教育:子供は学校で日本の神話や歴史を詳しく学び、地域活動への参加が奨励されます。給食は無添加の和食が中心になります。
  • ニュース・情報:テレビや新聞では、「国益」「主権」「伝統」といった言葉が頻繁に使われ、海外のニュースよりも国内の地域的な取り組みや課題が多く報じられるようになるでしょう。

総括

参政党が政権をとった場合、それは「戦後レジームからの脱却」をスローガンとした、大きな社会実験と言えるでしょう。国民の健康や地域の共同体、国の自立を重視する「内向き」で自己完結的な社会を目指す一方、その政策は国際社会との協調や経済合理性、科学的客観性といった側面で多くの課題やリスクを伴う可能性があります。

支持者にとっては「日本を本来あるべき姿に戻す」理想的な社会の実現と映るでしょうし、批判的な立場からは「非現実的で、国際的に孤立した危険な国家運営」と映るかもしれません。いずれにせよ、現在の政治とは全く異なる価値基準に基づいた世の中になることは間違いないでしょう。


編集部より:この記事は島田裕巳氏のnote 2025年7月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は島田裕巳氏のnoteをご覧ください。