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出版不況と言われて久しいですが、それでも作家になりたいと願う人は多くいます。今回は、累計800万部を超えるベストセラー作家・本田健さんの新刊『作家とお金』(きずな出版)を紹介します。
20年以上にわたり日本と海外で活躍してきた著者が、作家という職業の経済的側面と成功の秘訣を率直に語った一冊です。
「作家とお金」(本田健 著、きずな出版)
売れる本の4つの条件
本田さんは、売れる本と売れない本の違いについて、以下の4つの要素を挙げています。
1. 内容の充実:読者が「読んでよかった」と感じる価値ある情報
2. 分かりやすさ:専門的な内容でも理解しやすい構成と文章
3. 独自性:著者ならではの視点や経験に基づく内容
4. 面白さ:ページをめくる手が止まらない魅力
「読者は自分の時間とお金を投資して本を買います。その投資に見合う価値を提供できるかどうかが、売れる本と売れない本の分かれ目です」と本田さんは説明します。
作家の収入構造と現実
本書では、作家の収入について具体的な数字を交えて解説されています。一般的な印税率は8〜10%で、定価1,500円の本が1万部売れても、作家の手元に入るのは120〜150万円程度。年間数冊出版しても、専業作家として生活するのは容易ではありません。
本田さんは「作家として経済的に成功するには、本の販売だけでなく、講演、セミナー、オンラインコースなど、複数の収入源を持つことが重要」と指摘します。実際、本田さん自身も執筆活動と並行して、世界各地で講演活動を行っています。
デジタル時代の出版戦略
2024年の出版市場は前年比1.5%減の1兆5,716億円(全国出版協会・出版科学研究所調べ)と厳しい状況ですが、電子書籍市場は着実に成長しています。本田さんは「紙の本にこだわらず、電子書籍、オーディオブック、動画コンテンツなど、多様なメディアで作品を届けることが大切」と述べています。
また、SNSを活用した読者との直接的なコミュニケーションの重要性も強調。「出版社任せにせず、著者自身がマーケティングに積極的に関わる時代」だといいます。
長く愛される作家になるために
本書の後半では、一時的なベストセラーで終わらず、長期的に活躍する作家になるための心構えが語られています。
「流行を追いかけるのではなく、10年後、20年後も読まれる普遍的なテーマを扱うこと。そして何より、読者の人生に貢献したいという純粋な思いを持ち続けることが大切です」
本田さん自身、デビュー作から20年以上経った今も多くの読者に支持されているのは、この姿勢を貫いてきたからでしょう。
『作家とお金』は、作家志望者だけでなく、出版業界に興味がある人、自分の知識や経験を本にまとめたいと考えている人にとって、実践的なアドバイスが詰まった一冊です。夢と現実のバランスを取りながら、作家として成功するための具体的な道筋が示されています。
出版という夢を実現したい人は、ぜひ本書を手に取ってみてください。作家という職業の光と影を知ることで、より現実的な準備と戦略を立てることができるはずです。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)