楽天グループが、ふるさと納税におけるポイント付与を禁止する総務省の告示は違法だとして、無効確認を求める行政訴訟を東京地裁に提起しました。
2025年10月からの禁止措置に対し、楽天は「利便性や制度の普及に貢献してきた仕組みが一方的に否定された」と主張し、過剰な規制であり法的根拠も不十分だと反発しています。ポイントの付与に一定の上限を設けることで対応可能であり、全面的な禁止は行き過ぎだという立場です。
一方で、ふるさと納税制度には根本的な問題があるという指摘もあります。例えば東京都の税制調査会は、住民税が本来納められるべき自治体から流出し、「受益と負担の一致」という税の原則をゆがめているとし、廃止を含めた抜本的見直しを提案しています。
加えて、返礼品競争がインターネット通販化し、本来の「寄付」の趣旨から逸脱しているという懸念も根強くあります。
楽天側の主張には、企業としての経済合理性や地方経済の活性化への貢献という面もありますが、ふるさと納税制度全体が抱える歪みや不公平感を放置したまま、企業利益の最大化を正当化することには慎重であるべきでしょう。
ふるさと納税は、富裕層の不満を和らげると同時に、都市部の税を使って地方企業に利益を誘導する制度として機能してしまっています。
ふるさと納税による減収は、地方交付税や臨財債で補填される仕組みがあります。破産制度もなく、国が財政を保証しているので、自治体が個別に対応する必要ははありません。ただし、東京23区には補填がなく、自主的な対応が求められています。
自治体自身も問題を抱えています。岡山県吉備中央町が、ふるさと納税の指定取消後も返礼率約6割のコメを送ろうとしており、制度上限を大幅に超える違法・不適切な対応と批判されています。制度の公平性や個人情報の扱いにも問題があり、住民監査や第三者の検証が求められています。
今回の訴訟は、単に楽天対総務省という構図にとどまらず、ふるさと納税制度の在り方自体を問い直す契機となり得ます。地方創生や税制の公平性という観点からも、国民的な議論が必要なタイミングに来ているのではないでしょうか。
三木谷浩史氏 楽天グループHPより