変わるアニメの世界:あと数年で中国・韓国と並ぶ一勢力になってしまう日本

いい歳したおっさんが何を血迷ったか、と思われるかもしれません。今更感満載ですが、ラブライブにハマっております。基本はアニメ動画なのですが、その声優さんたちがアニメ動画を背景に歌って踊るという仕組みですが、芸能界の独特のしがらみもなく、素直に楽しめるのです。コンサートのチケットはまず手に入らず、やむを得ず、動画を見たりCDを買い漁ったりしています。

ラブライブが日本男児をなぜ、ここまで盛り上げたか、コンサートでもの凄い雄叫びが曲と共に会場で一体感を醸し出すのは何故なのか、ふと考えたのですが、たぶん、AKB48の流れの一環だと思います。ラブライブのサブタイトルはSchool Idol Project で、声優さんたち(CV=character voice と言います)がアイドル歌手顔負けの踊りと歌を披露し、センターステージを人気投票で決めるなど、まぁかつてのAKBで見た企画とそっくりといえばそっくりであります。また声優さんたちもある意味、ごくそのあたりにいる方がスターダムにのし上がった感じですがドームの公演会場でコンサートをすれば会場をトロッコやフロートで動き回り、日本の超一流の人気グループと同様の盛り上がりを見るにつけ、なるほどこれぞ本当のschool Idol Project なのだな、と思わず感心してしまうのです。

R.M. Nunes/iStock

何故今日、このような話題から入ったかといえば日本のアニメは世界で不動の地位と思っている方が大半だと思いますが、たぶん、それは大きな間違いで日本のアニメはあと1-2年で中国勢と韓国勢と共にその一つの勢力にしかならなくなるという危機感を感じているからなのです。

私の会社の事業の一つに書籍事業があり、そのまた一環でアニメ関係の書籍をイベント出店したりオンラインショップで売ったり、トロントにあるリアルの書店で販売しています。私が自ら自慢するわけではないのですが、私の右腕が異様なほどのアニメおたくでジャンルも一般向けから男性モノ、女性モノまでフルカバーできる強者であります。バンクーバーでの出店はその彼女といつもタッグを組んで売り場に出ているわけですが、この1年、アニメの的が絞れないのです。爆発的ヒットがないということはあります。ただ、それ以上に消費者の好みがあまりにもばらけてしまっているのです。一般向けは大ヒットが出ないので手を変え、品を変え、新しいバージョンを出して延命策を取っています。このあたりは大ヒット映画と全く同じ手法です。

ではオタク系の顧客のハートをどうとらえるか、ここなのですが、「オタクの深堀り状態」となっており、相当な「専門的で偏執的な内容のアートブック系」が売れるのです。100人いたら2-3人しか興味を示さないけれどその2-3人にとっては持ち金を全部はたいてでも欲しくなる商品です。日本の書店はかなりチェックしていますが、我が販売部隊の品ぞろえと同じぐらいのバラエティを持っているところは池袋のジュンク堂かアニメイトぐらいかもしれません。

そういう特殊マーケットを狙うならば確かに私どもはとんがったビジネスをしていると思います。ただ、アニメ産業全体で考えた場合、日本の若者たちが皆で推し出す力が無くなっています。私どもは韓国系や中国系の一部のアニメ作品で日本語の版権を取得し、日本語版で製本されたものを輸入販売していますが、一定数売れます。理由は製本技術が素晴らしく、一冊1万円出しても永久保存版としての価値が維持できることもあります。ただ、アニメの販売額としてはかつての100%日本アニメから7-8割ぐらいにまで下がってきており、今後、版権次第でもっと下がるとみています。

売れ行きがばらけ始めた1つの理由は言葉のハンディがあると思います。またAKBの派生グループが上海や台湾、インドネシアなどアジア各地で大活躍したことが逆にローカルマーケットの萌芽につながったとみています。

一種の文化の輸出であり、文化が現地でも芽生えたわけでこれを責めるわけにはいきません。世界で起きているのは同質化であります。同じ趣味の人たちがネットなどを通じて世界中で繋がり、それが新しい文化をどんどん生み出しています。これが上述のイベント物販で「アニメの的が絞れない」ということにつながっていくのです。

結局日本が抱えている様々なノウハウ、それこそ経済を支えてきた星の数ほどの新製品から書籍、音楽、芸術、そしてアニメまで海外に広く伝わる一方で現地で似たようなものが生まれることを防ぐことはできないのです。いや、むしろ競争が生まれ、より切磋琢磨された市場が生まれてくるのですが、日本はどの分野においても先進性があったのに多くの分野で脱落してしまったことは否めない事実です。競馬でいう先行逃げ切りは産業界ではもはや不可能に近く、日本はあらゆる方面にどういう戦略を持って対応するか、再構築が必要です。

私が国際人養成を言い続けているのは世界の様々な文化を知り、何が求められているのかをもっと大所高所から理解し、相手の懐に入り込まないと販売増など期待できないと申し上げたいからなのです。日本の技術も品質も素晴らしい。これは疑いのない事実です。では何がヘタか、といえば国際基準のマーケティングなのです。日本スタンダードから脱却し、国際基準のマーケティングをするために国際感覚を身につけないと今後、勝ち残ることはできないとこれは強く断言いたします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年7月13日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。