「経験」にはお金と時間を惜しまず、先送りしない方が良い

先月、友人に誘われて銀座の有名なステーキ店に出かけました。鮑尽くしの食事ということで、1つ45万円の国産最高級の鮑(写真)を6人で4個シェア。お料理だけで会計は1人35万円でした。

通常では予約のできない席を友人が確保して誘ってくれたから参加できました。一回の食事にそんな支払いをするのはお金と時間の無駄遣いと思うかもしれませんが、私はそうは思いません。お金では買うことのできない貴重な経験ができたからです。

経験とは自分がタイミングをコントロールできるものではなく、巡り合わせです。機会が巡ってきたら先送りせずにやってみるべきです。

といっても、自分の置かれた環境による制約もあります。

私は20代の学生時代は今と違って時間はありましたが、お金はありませんでした。沢木耕太郎の「深夜特急」に影響を受けて、バックパッカーとしてアメリカやインドに貧乏旅行に出かけました。

アメリカはサンフランシスコからニューヨークまでグレイハウンドバスで2週間以上かけて大陸横断。一泊20ドルの安宿を飛び込みで探して泊まり歩きました。

予定を立てない旅はこの時期にしかできません。今から考えれば貴重な経験でした。

もしこれから同じような旅行をしろと言われても体力にも自信がありませんし、もはや狭くて汚い安宿にあまり泊まりたいとも思いません。

年齢を重ねるにつれて時間と体力は失われていきましたが、経済的な余裕は得られるようになりました。

それと同時に自分が経験したい興味の対象も変わってきています。

だから自分が体験できることは、先送りしないで興味のあるうちに時間とお金を惜しまず経験しておいた方が良いと思うのです。

5年後、10年後に同じ経験が体験できるとは限らず、自分の興味も失せているかもしれません。

私も数年後には食に対する興味を失い、お酒も飲めない身体になっている可能性はゼロではありません。

今年の秋には同じ銀座のステーキ店で白トリュフを堪能できるディナーを予約しました。鮑の2倍以上の会計になるようですが、今やってみたいと思う経験にお金と時間を惜しまず注ぎ込みたいと思います。

maruco/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年7月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。