夏の京都・東福寺散策

半年ぶりに息子に会うために京都に来ました。留年した息子がきちんと大学に行っているか。一方である会社にも勤めているのでその現況確認を行うためでした。結論から言うとまぁ楽しくやっているようです。

息子に会うのは夕方からで、少し時間があります。京都駅近郊で少し寄り道してから約束の場所に行こうと思い、やってきたのは東福寺。東福寺といえば秋の紅葉が見事でこの時期は多くの観光客で賑わいを見せるのですが、それ以外の時期は比較的空いています。

寺の西側、「臥雲橋(がうんきょう)」から東福寺に入ります。秋はここからも紅葉の絶景が見られるのですが、著名な通天橋は有料ですが、こちらは無料とあって紅葉のピーク時は押すな押すなの大渋滞となります。

臥雲橋から通天橋を望みます。今は深緑で青々としていて、これはこれでいい景色なのですが、これが秋には燃えるような赤に染まります。

東福寺の見どころは紅葉だけではありません。こちら東福寺大方丈は全国的にも珍しく四方に「国指定名勝 東福寺本坊庭園」と呼ばれる庭園があります。作庭家・重森三玲によって昭和14年に完成されたものです。

拝観の順路通り歩を進めると最初に見えるのが東庭。北斗七星を表現しています。もともとは山内の東司で使用されていた礎石を使用して作られた庭園で、星を表現した円柱の周りを白川砂、苔で囲っています。星をテーマにした庭園って、ありそうでない気がします。

南庭は伝統的な日本庭園。正直、庭園について知識はなにも持ち合わせていないのですが、この庭の前の廊下に座ってじっと眺めているだけで何とも言えない落ち着いた気持ちになります。外国人の方も並んで庭を眺めていますが、そういった気持ちになれるのはきっと万国共通なのではないかって思います。

北庭は勅使門から方丈に向けて敷きつめられていた切石を再利用してつくられた市松模様の庭園。このあとの西庭もそうなんですが、市松模様の庭園ってあまりない気がします。市松模様自体は日本でも古来からみられる模様なんですがね。重森三玲は伝統を重んじる日本庭園の世界を守りつつ、斬新なアイデアを持って庭園に新たな風を持ち込んだ方だったのではないかと想像します。

西庭はさらに大きな市松模様。かつての本坊で使われていた敷石の縁石が直線であり、その廃材を利用しなければならないことで導き出したのが、直線を美として表現できる市松模様でした。東福寺内の通天橋を渡った先にある普門院にも市松模様の庭園があるのでそちらを参考にしたとも言われています。

方丈には建物から少し突き出たようになっている舞台状の場所があります。

ここから眺める通天橋。日の光が夏を感じさせますが、高い場所にあるので風が通り思いのほか涼しいです。

ということで、先ほど方丈から眺めていた通天橋を渡ります。紅葉シーズンは大行列ができるのですが、シーズンオフの6月下旬はゆっくり時間をかけて渡ることができました。

通天橋は本堂から開山堂を結ぶ橋廊であり、両堂の間の谷を渡るために1380年にかけられた歴史のある橋です。

6月下旬。紫陽花は最後の見ごろを迎えていました。

橋はただ渡るだけではなく、ところどころ降りることができる場所があります。紫陽花や青紅葉を存分に楽しみながら寄り道をすることができます。

橋の一部舞台のように突き出た部分からは、洗玉澗の美しい谷の絶景を眺めることができます。秋はここで写真を撮るのも競争です。

舞台から洗玉澗を見下ろす。

通天橋から方丈を眺める。左手に突き出た部分が先ほど通天橋を眺めた舞台。

通天橋を渡り、開山堂にやってきました。ここには東福寺を建立した円爾弁円の尊像が祀られています。円爾は鎌倉時代に宋で仏教を学んだのちに全国で寺院を立てた名僧であり、晩年はここ開山堂に隣接する普門寺に住み、ここで谷の向こうに建てられつつあった東福寺を眺めていたそうです。

その普門院は現在工事中でしたが、その廊下に座って庭を眺めることはできました。白砂が太陽の光を反射して眩しい。ちょっとわかりにくくなってしまっていますが、この白砂が市松模様を描いており、方丈の市松模様もここから着想を得たものとされています。

例年にない早い梅雨明けで6月下旬には夏本番のような日差しを受けた京都、東福寺。日向に出るとかなり暑いのですが、方丈や橋を渡る風は意外に涼しく感じました。秋もいいですが、夏の東福寺もみどころはたくさんあります。この時期、ゆっくりと回ることができる東福寺にぜひ足を運んでみてください。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年7月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。