日鉄のUSスチール買収に猛反発のクリフスCEO、一転して支持

アメリカの鉄鋼大手クリーブランド・クリフスのローレンソ・ゴンカルベスCEOは、2025年6月に完了した日本製鉄によるUSスチールの買収について、「米国の鉄鋼市場の強さと魅力を示すものだ」と歓迎する姿勢を示しました。これまでクリフスは一貫して日鉄の買収に反対してきましたが、今回の発言はその立場を大きく転換したものです。

ゴンカルベス氏は、買収完了後初となる7月21日の決算説明会で、「米国は鉄鋼産業にとって最も魅力的な市場であり、日鉄による巨額の投資はその価値を裏付けている」と述べました。また、日鉄が米国内において高炉を使った一貫製鉄体制を重視していることを高く評価しました。

 

日鉄による買収は、当初は米国内での外資規制の議論を呼び、2024年にはバイデン政権が一時的に買収差し止めを命じるなど紆余曲折がありました。しかし、日米首脳会談などの影響もあり、最終的にことし6月に買収が完了しました。

一方で、クリフス自身も当初はUSスチールの買収を目指しており、敗れた後は日鉄の買収を「歴史的な失敗」と厳しく批判していました。2024年には、ゴンカルベス氏が日鉄の橋本英二会長に共同買収を持ちかけたものの断られ、その後は公然と日鉄案を攻撃していました。

こうした姿勢の転換の背景には、クリフスの厳しい経営環境があります。2025年4〜6月期決算では4億8300万ドルの赤字を計上し、4四半期連続の最終赤字となりました。販売価格の下落に加え、米国内の高炉や鉱山の一部停止によるリストラ費用も重くのしかかりました。

ゴンカルベス氏は過去に「日本は邪悪だ」といった過激な発言をして問題視された経緯もあります。にもかかわらず、今回のように日鉄の米国での投資を評価する発言をしたことからも、クリフスが自社の生き残りをかけて柔軟に姿勢を変えている様子がうかがえます。

現在、米国の鉄鋼産業はコスト高や競争力低下に直面しており、USスチールもクリフスも厳しい状況にあります。ラストベルトと呼ばれる地域の経済も停滞が続いており、今後はライバルである日鉄の動向がクリフスにとっても大きな意味を持つことになりそうです。

ゴンカルベスCEO クリーブランド・クリフス YouTubeより