「人生という運ゲー」の正しい攻略法

黒坂岳央です。

多くの人は「運」という言葉を嫌う。特に、物事がうまくいかないとき、その原因に運の要素が強いと「自分にできることはなにもない」と脱力する人もいるだろう。

だからこそ人は、確実性を求めたがる。努力すれば必ず報われる、正解を選べば必ず成功するという因果関係に安心を求めるのである。

しかし、現実はそう甘くない。実際、この世は運の要素はかなり強い。だがこれは決して自暴自棄で救いようがない話ではなく、むしろそこには大きなチャンスがあると思っている。

simonkr/iStock

成功者は「期待値」を見ている

結果を出すビジネスマンは、「絶対確実、安心安全」みたいな話に惹かれない。そこには失敗もないが、成功もないからだ。彼らは「確率的に成功しやすい選択肢」にベットし、期待値の高い行動の試行回数を回すという感覚を持っている。

たとえば広告運用では、A/Bテストを回し、反応の良いクリエイティブを選び続けることで全体の効果を高めていく。一投目から100点満点の完璧な一撃ではなく、打率を上げるための試行錯誤を繰り返しているのである。

これは筆者自身の仕事にも当てはまる。動画や記事を投稿する際には、事前にSEOや過去の反応を分析し、最大限期待値を高めた上で世に出している。だが、それでも大外れすることもあれば、想定外のヒットを飛ばすこともある。

でもいちいちめげていたら何一つできない。仕事でチャンスを掴める人とは、なかなか当たらないバットをしつこく振り続けられる人なのだ。

トータルで勝てばいい

現在、筆者は引っ越しのために新居を探している。

ちょくちょく物件を探していると、ある日、突然自分たちにとって大変良い物件が見つかった。「もう2-3日待ってから問い合わせしよう」と考えていた。だが、問い合わせをすると「もうすでに申込みが入っています」他の人に先を越されてしまった。

正直、瞬間的にしょげなかったといえば嘘になる。気を取り直して家探しを続けると、数日後、一軒目より好条件の物件が新たに出てきた。今度は迷わず即行動し、誰よりも早く内覧予約を入れた。自分の後ろにはたちまち、すぐ数件の内覧希望者が続いたが、現時点で自分が物件の申し込みを押さえている状況だ。

この経験から言えることは「最初の手痛い失敗があったからこそ、次の成功につながった」ということだ。

筆者は家探しにおいて、人口流入エリアにおける住居というものはまるで人気スマホのようにポンポン売れる、という感覚が欠けていた。そのため、1軒目は初動の遅れが敗北につながったのだ。しかし、この経験から「人気物件は早いもの勝ち」という市場感覚を得たことで、二回目は失敗を回避し、1軒目よりさらに良い物件を確保するチャンスを掴むことができた。

人生における「運」とは、このように単発の勝ち負けでは判断できない。むしろ、序盤で何回か立て続けに負けてもたった1回の勝ちでトータルで得になることもある。いざ幸運が舞い降りてきた時に絶対逃さないよう、運ゲーという本質を理解して「運を上手に掴む力」を磨くべきだろう。

「運ゲー=努力否定」ではない

ここで重要なのは、「運ゲーだから努力は無意味」という短絡的な結論に飛ばないことである。

たしかに、人生にはどうにもならない偶然がある。人との出会い、仕事のチャンス、あるいは病気などは、その多くが本人のコントロールを超えている。だが一方で、明確に努力で伸ばせる分野もある。たとえば勉強やスキル習得は、ある程度までは完全に「努力ゲー」である。

「いや、それも遺伝子ゲーでは?」という反論もあるだろう。たしかに上限値や習得速度には個人差がある。しかし、正しい方法で継続すれば、過去の自分を超えることは誰にでも可能である。そしてある程度のレベルまでなら、ほとんどの人が年齢に関係なく熟練できる。

英語やパソコンがまったくできなかった人が、正しい手順を踏んで長期で訓練すれば、誰でも仕事で使える実用レベルに到達する。そこに天才的な才能が必要な場面はほとんどない。

必要なのは、正しい努力と、繰り返し試行することである。

運だからこそ、行動を止めない

世の中は「人生は運ゲー」に萎える人が大変多いが、筆者はむしろ、「人生は運ゲー」を大変ポジティブに捉えている。

なぜなら、挑戦と行動を繰り返し、大衆が避けるリスクを取れば誰にでもチャンスは巡ってくるからだ。筆者は自分の実力以上のチャンスはしつこく空振りする中で偶然に引き当てた感覚が強い。

逆に、「すべては努力次第」と信じ込むと、うまくいかないときに自己否定が強くなりすぎる。それは健全な精神状態を壊してしまう。

人生には、どれだけ準備しても報われない瞬間がある。だが、そこで試行回数を止めなければ、次の打席でヒットが出るかもしれない。だからこそ、「運ゲー」という現実を冷静に受け止めた上で、期待値の高い行動を繰り返していく。それが、人生の正しい歩き方である。

 

■最新刊絶賛発売中!

働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。